2025年8月14日無料公開記事洋上風力発電

29年度に1GW級の案件形成へ
国内浮体式洋上風力、40年15GW目指す

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 国土交通省と経済産業省は浮体式洋上風力で2040年までに15GW以上の案件形成目標を設定した。また、29年度中をめどに1GW級の浮体式洋上風力案件を形成する。経済省と国交省が洋上風力産業ビジョン(第2次)を公表した。新たなビジョンでは、「世界的なインフレなどへの対応」「魅力的な国内市場の創出」「産業・技術基盤の充実」「グローバル市場への展開」を軸としており、案件形成や国内調達比率、洋上風力人材、海外案件への関与などで新たに目標を設定した。
 政府は洋上風力で2040年までに30~45GWの導入目標を掲げており、このうち3分の1~2分の1を浮体式が占めることになる。29年度から40年までの約10年間で浮体式洋上風力の案件形成が加速することが見込まれる。なお、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)に基づく洋上風力発電の開発に向けては現在、長崎県五島市沖で風車6基からなる浮体式洋上風力発電所の建設が進められている。浮体式ではこのほか、準備区域として東京都で5区域、北海道で2区域、岩手、富山、和歌山で各1区域の計10区域が整理されている。
 浮体式洋上風力発電の商用化に向けては、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクトで秋田県南部沖と愛知県田原市・豊橋市沖の2区域で大型風車を用いた実証を実施することが決まっている。これに加え、排他的経済水域(EEZ)展開を見据えた大水深などの過酷海域における浮体式実証も実施する方針を示した。また、風車や次世代浮体などの要素技術検証や風車・浮体トータルシステムとしての技術実証、風車開発、認証取得などのための実証サイトの整備に向け、今年度中に必要な設備、気象・海象条件や運営体制などの仕様を検討する。26年度以降、浮体式実証などで整備する設備を活用して、実証サイトの整備を進める。
 国内産業基盤の充実に向け、浮体式に対応した施工・O&M(運転保守)に必要な港湾などの基盤整備と、そのための調査・研究・実施体制を確保していく。施工やO&Mの最適化に必要な技術開発も推進する。洋上風力関連船については、現在検討中の需要予測結果を踏まえ、官民連携のもと関係船舶を適切に確保していくとした。
 国内調達比率については、2040年目標を60%から65%に引き上げ、風車ナセルやブレードの国内製造・供給力強化を目指す。昨年1月に運転を開始した石狩湾新港洋上風力発電所では国内調達率が60%超であったことなどから、達成可能な目標として判断した。
 グローバル市場への展開として、2040年までに国内発電事業者全体で30GWの海外案件に関与する目標を設定。発電事業者などの技術力強化や浮体式基礎などの浮体式洋上風力発電に関するサプライヤーの輸出展開のための投資促進を図る。また、アジア太平洋に向けた製造拠点の創出として、風車メーカーとの官民協力枠組みなどを通じ、風車主要製品の製造拠点の国内への立地推進に向けた調査や議論を進めていく。風車メーカーとの連携においては経済産業省が、6月にシーメンスガメサリニューアブルエナジーと、7月にベスタスとの間で協力枠組みを立ち上げている。
 洋上風力関連人材については、40年までに約4万人を育成・確保する。目標値は企画開発や設計、製造、設置、O&Mなど洋上風力事業に関わる人材すべての総数で、今後、産学官連携のもと、産業界において洋上風力人材育成・確保計画とロードマップを作成する。
 このほか、インフレなどへの対応として、さらなる公募制度のあり方の検討や、インフレを踏まえた着床式発電コスト目標の早々の見直し、浮体式発電コスト目標の検討を行っていく方針だ。

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