2025年4月23日無料公開記事洋上風力発電

商用運転開始、バージ型で国内初
響灘沖浮体式洋上風力、NEDO実証機活用

  • X
  • facebook
  • LINE
  • LinkedIn

ひびき灘沖浮体式洋上風力発電所

 北九州市響灘沖の「ひびき灘沖浮体式洋上風力発電所」の商用運転が22日に開始した。浮体式洋上風力発電所の商用化は国内で2基目、鋼製バージ型浮体としては国内初となる。同発電所は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究(バージ型)」として、2019年から実証運転を行っていたもので、昨年3月末の研究終了後、実証研究メンバーのグローカルが設備一式を引き継ぎ、商用運転に向けた準備を進めてきた。発電した電気は「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」を活用して九州電力送配電に全量売電する。今後20年間運転し、その後撤去を予定する。
 同発電所の所有・運用を目的として設立された「ひびきフローティングウィンドパワー合同会社(HFWP)」に出資するSMFLみらいパートナーズとグローカル、合人社グループ、コトブキ技研工業、中国電力、リニューアブル・ジャパンの6社が同日、記者会見を行った。HFWPの代表社員であるグローカルの奥原誠次郎社長があいさつし、「多くの方々の協力をいただき、NEDO実証から今日に至り、ようやくFIT認定をいただき、本日朝9時から商用運転を開始した」と語った。
 同発電所のNEDO事業は、2014年に日本近海の気象・海象条件に適した次世代浮体式洋上風力発電設備と施工方法の開発・検証が開始され、19年から実証運転を開始。同発電所はドイツのエアロダイン社製の3MW級の2枚羽風車を搭載したバージ型浮体1基で、北九州港沖合15km地点、水深54~56mに設置されている。浮体の製造はカナデビアで、設計はBWイデオルの特許技術「ダンピングプール」をベースにしている。
 24年3月末に実海域での実証を終えNEDO事業は完了し、準備期間を経て、今回、HFWPによる商用運転を開始した。商用運転にあたり、グローカルは実証に引き続きO&M(運転保守)業務を提供する。北九州市に設けた観測所に同社の技術チームが3人常駐する。「低コストに向けた技術的な課題はまだまだある。早期に技術を獲得し、6社で協力しながらより効率的で安全なメンテナンスをしっかり構築するというのが売電収入以上に大切な目的だと意識している」(グローカルの奥原社長)
 同事業への参画について、SMFLみらいパートナーズはアセットマネジメントを提供し、浮体式洋上風力の事業性評価やリスク分析などの知見を深めていきたい考えだ。中国電力は発電事業の知見を活かしつつ、浮体式洋上風力の技術的課題の解決を通じた知見蓄積を狙う。合人社グループは公共施設など建築物の管理・運営で培ってきたノウハウをエネルギーやインフラ事業に活用することで、事業拡大を図る。コトブキ技研工業は産業機械メーカーとしての実績と経験を活かしつつ、今回の事業参画で洋上風力のノウハウを蓄積し、将来的には国産風車の開発も目指していくとした。また、リニューアブル・ジャパンは太陽光発電事業で培ってきた資金調達やO&Mの知見を活かしつつ、新たな事業領域として浮体式洋上風力分野に参入し、自社の専門知識の強化や人材育成につなげる。
 出資・参画各社とHFWPは、漁業関係者を含む地元ステークホルダーとの共生を図りながら、安全かつ安定的な運用を最優先に取り組むとしている。

関連記事

  • 海事プレスアプリ
  • ブランディング