2026年6月25日無料公開記事

国内投資家向け船舶ファンド視野
野村HD、船舶分野進出検討のねらい

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 証券大手の野村ホールディングスが船舶・海運分野への参入を視野に入れている。同社グループのプライベート・アセット(非上場資産)やリアル・アセットを含むオルタナティブ資産拡大に向けた取り組みの一環で、具体的には国内機関投資家向けの船舶投資ファンドの組成を議論している。この業界の知見獲得を目的に、ドイツの船舶管理大手シュルテ・グループ系の船舶投資会社ナビゴ・シップホールディングへ出資した。野村ホールディングスで本件を担当するインベストメント・マネジメント企画部に、狙いと今後の方向性を聞いた。

■オルタナティブ資産拡大

 ― 野村が船舶・海運分野に注目した背景は。
 「アセットマネジメント業務を担うインベストメント・マネジメント部門の取り組みだ。当社グループはこれまで、上場株式や債券などのパブリック・アセットを中心に取り扱ってきた。それに加え、プライベート・アセットやリアル・アセットを含むオルタナティブ資産の取り扱いを広げていこうとしている。また、社会課題の解決に寄与できるものをポートフォリオに組み込みたいという考えがある。その方向性に船舶・海運分野が資するのではないかと考えた。船舶・海運は市場規模が大きく、加えて脱炭素やエネルギー輸送など日本の国益にもつながる分野であり、われわれが目指す戦略にフィットすると考えている」
 「われわれが目指しているのは、国内機関投資家から資金を募り、船舶・海運分野に投資するファンドを組成することだ。そのために今回のナビゴ・シップホールディングへの出資を通じて株主のシュルテ・グループとの連携を築き、将来的に国内機関投資家向けファンドを展開していく上でどのようなことができるのかを議論している段階だ」
 ― 野村グループが現在扱っているリアル・アセットは。
 「不動産や航空機リースなどが中心だ。海外の森林ファンド運営会社への出資の知見を活かして、国内森林についてもアセットマネジメント事業につなげていけないか研究をしている」
 ― 野村グループのオルタナティブ資産への現在の投資規模と今後の目標は。
 「オルタナティブ運用資産残高は2026年3月末時点で約4兆円。明確な将来の目標値は出していないが、プライベート・アセット分野に全社的に注目している」

■中リスク・中リターン志向

 ― 投資対象として船舶・海運分野の特徴をどのように見ているのか。
 「海運マーケットにはボラティリティがあるという認識を持っている。ただし、一概に全体がそうだとは思っていない。コモディティ化された船種もあればそうでないものもあり、収益形態や契約期間によっても異なる。このため、異なるマーケットの船種や契約期間を組み合わせることで安定的なキャッシュフローを得ることもでき、ミドルリスク・ミドルリターンのアセットクラスになり得ると考えている」
 ― 海運の高いボラティリティを活用したハイリスク・ハイリターンは追わない。
 「そうだ。逆に超長期の固定用船料案件であればローリスク・ローリターンもあり得るが、そのような案件が数多くあるわけではない。ミドルリスク・ミドルリターンの商品は、われわれが想定している国内機関投資家のニーズにもフィットすると考えている」
 ― さまざまな船種に分散投資する考えか。
 「そうだ。船種だけでなく、契約期間や契約先も含めてポートフォリオを分散化していく考えだ」
 ― 分散する中でも特に重点的に投資したい分野は。
 「われわれは投資にあたって社会課題の解決に資する可能性があるという点も重視しており、その観点から環境関連船に注目している。海運業界は脱炭素化や技術革新に力を入れている。今回出資したナビゴも、洋上風力発電支援船、エネルギー輸送船、液化二酸化炭素(LCO2)輸送船などを保有している」
 ― 船舶への直接投資と事業会社への投資のいずれを考えているのか。
 「基本的には事業会社への投資だ。今回の出資も用船提供事業を行うナビゴのビジネスに投資している」

■シュルテと連携

 ― 今回ドイツの船舶管理大手であるシュルテ・グループと組んだ経緯は。
 「われわれが以前から海運分野に注目してきた中で、シュルテの事業も注視していた。シュルテとつながりがあった中でわれわれが取り組みたい方向を説明したところ、同社が出資するナビゴが、まさにわれわれが注目しているアセットを拡大したいという考えを持っていたため、金融と実業の連携について検討を進めた結果、出資に至った」
 ― 今後もシュルテと連携していく考えか。
 「基本的には連携しながら進めていきたい。シュルテは船舶管理で非常に実績があるが、それに加えてかなりの規模の船隊を保有しており、船舶の保有・管理のノウハウが非常に豊富だ。また、デジタル分野にも積極的に取り組んでおり、船舶・海運分野の総合的なサービスプロバイダーとして発展していきたいという考えを持っている。それに対して、われわれがファンドによる資金供給という形でサポートできればよいと考えている」
 「一方で、現時点で具体的な話はないが、船舶をアセットマネジメント・ビジネスとして扱うにあたり有益なパートナーがいれば、国内外を問わず協力を検討する」
 ― ナビゴへのR&D(研究開発)投資を通じてどのような知見を得たいか。
 「ナビゴはSPC(特別目的会社)型の船主業を行っているため、同社への出資を通じて新造船発注や中古船購入から、ファイナンス調達、用船契約の確保、出口戦略までの船主業全般の知見を得たい。また、株主のシュルテは船舶管理の豊富な実績を持っており、そのような有力企業がどのようなオペレーションを行っているのかを間近で見たい。さらに、将来的に機関投資家向け商品を組成する上で、何が投資家に響くのかを実際の船主業を見ながら模索したいと考えている」

■エクイティ供給拡大へ

 ― これまで投資家から野村に対して船舶・海運分野の投資商品に対する要望はあったか。
 「そもそも野村が船舶・海運分野を扱っているという認識自体がないため、ゼロではないもののそうした声はまだ多くない。今回のわれわれの発表によってそうした声が聞こえてくればよいと思っている」
 ― 海外を含めて参考にしている企業はあるか。
 「明確なモデルがあるわけではないが、国内外の船舶ファンドをイメージしながら進めていくことになると思う。この分野は日本ではまだ事例が少ないので、われわれとしてはブルーオーシャンではないかと考えている。日本の船舶業界ではエクイティの出し手は船主や海運会社、商社などの事業会社が担っているケースが多く、その意味でプレーヤーが限られている。一方で、船舶はかつてと比べて大型化・多様化し、資金調達ニーズも変わってきている。その中で、事業会社だけではなくファンドを通じたエクイティ供給も今後広がっていくのではないか」
 ― 投資対象船の用船先は国内外を問わずか。また、中古船も対象にするか。
 「国内外を問わずということになると思う。安定運用の観点から、信用力の高い用船者向けになるだろう。ナビゴもそのような用船者に長期貸船してリスクを抑える戦略を取っており、基本的にそのようなアプローチが有力ではないか」
 「新造船か中古船かは問わない。ただ、陳腐化リスクもあるので、あまりに古いタイプの船舶はハードルが高いと思う」
 ― 投資する船舶の建造国の考え方は。
 「ナビゴへの投資に関してはシュルテを中心にソーシングを行っている。その中では日本、中国、韓国建造船を幅広く見ており、われわれもそれをフォローする形になると思う。一方、日本政府の成長戦略重点分野に造船が入っていることにも留意している。もちろん投資家目線でリターンが見合うことが前提になるが、日本の国益に貢献するという観点で日本建造案件に投資できればよいと思っている」
 ― 現在は歴史的にみて船価が高い水準にあるが、投資のタイミングに対する考え方は。
 「船種やタイミング、契約期間の分散化などで対応していく。シュルテは140年の歴史を持ち、海運マーケットが変動する中で長年船舶事業を続けており、その中で培われたマーケットの見方も学んでいきたい」
 「ナビゴの戦略は、キャピタルゲインを狙うものではなくインカムゲイン重視だ。アセット価格の変動は存在するが、必要とされる船舶を必要とするプレーヤーに貸していくスタイルなので、アセット価格のボラティリティが事業に大きく影響しないと考えている。既に用船契約を確保している案件もあり、さまざまな船種を保有していることからも、少なくともナビゴへのこのタイミングでの投資は問題ないと判断した」
 ― 投資対象として船舶・海運分野の難しさは。
 「やはりボラティリティの高さで、為替なども含めて複合的なリスク要素がある。それをいかにコントロールするかだ。日本の投資家はまだ積極的に船舶への投資を行っていないため、手を出しにくい分野という認識があるかもしれない。だからこそわれわれも深掘りしていきたいと思っている」
 ― 海運・造船に対する一般からの関心が近年高まっていることも投資商品開発の追い風になるか。
 「海運会社の業績は外部環境に大きく左右されるが、それだけ海上輸送が世界経済の中で重要なポジションにあるということを再認識した。海運業が注目されていることが追い風になるかは分からないが、日本の機関投資家からのニーズは十分あると感じている」
 ― 商品販売開始時期のイメージは。
 「現時点では具体的には設定していない。まずはナビゴ、シュルテと連携しながら何ができるのかを踏まえて決めていくことになる。当社グループ全体の目標は意識しているが、マーケットは水物でもあり、船舶だけでなく他のアセットも含めて目標を追っていくことになる」
(聞き手:深澤義仁)
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