海運市況の変動リスクをヘッジする手法として、船舶用船料先物取引(フォワード・フレート・アグリーメント=FFA)の利用がドライバルク部門を中心に海外で一般化している。日本でも邦船大手を中心にその利用が定着しつつある。うまく活用すれば、海運市況変動による収支への影響を緩和することが可能だが、先物取引によるリスクヘッジに対する理解が不足していたり、海外船社がFFAで大きな損失を出したといったネガティブなニュースから利用をためらうプレイヤーもまだ多いと考えられる。この連載では、ドライバルクのFFAに詳しいエクセノヤマミズ穀物部の大本博司副部長に、FFAの仕組みや利用する際の留意点などについて解説していただく。
FFAは一言で言えば、定期用船(タイム・チャーター)価格の先物取引である。実際に取引されている船型は、ケープサイズ、パナマックス、スープラマックスの3種類で、ハンディサイズはほとんど取引されていない。取引限月には単月、四半期、1年のカテゴリーがあり、主に取引されるのは直近3カ月の単月物で、次に四半期物、ごくまれに1年物が取引される。
FFAは現物の船舶の受け渡しが発生しない、いわゆるペーパー取引であり、期限が到来するとボルチック取引所が公表するスポット用船インデックス価格の月間平均値を基に強制的に差金決済される。期限前にFFAのポジションを手じまいする場合、その取引が成立した価格を基に差金決済が行われる。
FFAが必要とされる背景には、海運会社や荷主が船舶や貨物などの現物取引だけでは海運市況変動リスクを回避できないという現実がある。海運会社は、単年度のネットポジションがスクエア(均衡)であればヘッジの必要はないが、実際にはそうでないことが多い。例えば、期初に2~3割のポジションしか埋まっていなければ、年度予算が期初目標から大きく乖離する可能性がある。
海外では、ドライバルク船社をはじめ、エネルギーや穀物会社、ファンドなど多くがFFAを利用しているが、日本国内でドライバルクのFFAを利用しているのは、大手や準大手の一部オペレーターおよび商社に限られている。
日本国内のオペレーターは通常、会計年度を基に手持ちの船腹(ロングポジション)に対してマーケットを見ながら先の貨物を決めていく。時にはスポットで船腹を調達することもある。一方、海外勢は、スポットマーケットから積極的に船腹を調達するケースが多く、基本的には手持ちの船腹でもマーケットから調達する船腹でも、荷主にフレートを売る(ショートポジション)時点でFFAの買いヘッジを行う。さらに、ボヤージ・チャーター(航海用船)でフレートを売った場合、バンカー先物を買って燃料油価格の変動リスクをヘッジすることもある。ただし、売ったフレートに対してどの程度ヘッジするかは船社の戦略により異なり、フルヘッジする場合もあれば、5~7割程度でヘッジする場合もある。
一般的に海外船社は、FFAを利用しない方がリスクが大きいと考えており、特に有名な船社ではほぼ100%FFAを利用しているとされる。
一方、邦船社は、フレートを荷主に売った際にFFAの買いヘッジを行うのではなく、基本的に手持ちの船腹に対してFFAの売りヘッジを行うことが一般的である。マーケットが下落した場合に備え、FFAの売りポジションで一定の利益を確保することが目的だ。
日本の専業船主は現在、FFAを全く利用しておらず、現状ではニーズもないと考えられる。船主が新造船の長期用船契約を締結しにくい状況下で、例えば竣工から3~5年後のヘッジが可能であれば、船主からFFAのニーズが生まれる可能性もあるが、実際にそのような先物の限月は取引されていない。また、FFAは期近が高く期先が安いバックワーデーションが常態であるため、期先の売りヘッジニーズが発生しにくい。FFAの基準船型と現在日本で建造されている新造船のスペックの違いから生じる用船料の価格差もネックとなるだろう。
FFAは基本的にスポットから半年先までのヘッジ手段として利用され、1年以上先のヘッジには適していないと考えられる。
インデックス連動型のCOA(契約)などが日本で増えると、インデックスに基づくFFAとの親和性が高くなるため、オペレーターや荷主によるFFAの利用がさらに拡大する可能性がある。
エクセノヤマミズはかつてFFAの相対取引を日本企業に提供していたが、現在は行っていない。ただし、用船のブローキングを行う際に顧客に対してFFAを利用したヘッジ方法をアドバイスしたり、FFAや金融・商品市場の分析を踏まえて海運市況予測を提供したりすることで、他社との差別化を図っている。