ボルチック国際海運協議会(=BIMCO、本部:デンマーク)は昨年「シップリサイクリング・アライアンス」を発足した。メンバーは各国の船舶解撤業界団体、船舶解撤ヤード、解撤船買取業者(キャッシュバイヤー)や船主などの代表者。船舶リサイクル業界と海運業界の利害を調整し、シップリサイクル条約(香港条約)の実施と履行支援する。BIMCOでEU規制関連とシップリサイクルを担当するグドラン・ヤンセンス氏が本紙の書面インタビューに応じ、同アライアンスの活動と船舶リサイクルに関する課題などを語った。
― シップップリサイクリング・アライアンス設立の経緯は。
「シップリサイクル条約の発効に向けて準備を進める中で、BIMCOは船舶の安全かつ環境面で健全なリサイクルを望む船主が実はリサイクル施設と多くの目標を共有していることに気が付いた。これらのリサイクル施設は、シップリサイクル条約への準拠を目指し、条約への自主的な準拠を達成しているか、あるいはすでに準拠要件を上回っていた。このような背景から、シップリサイクル業界と海運業界の声を調整するためにアライアンスが結成された。主な目標は、安全で環境面で健全なシップリサイクルを世界的に推進し、旗国、リサイクル国、港湾国などの利害関係者による条約の効果的な実施を確保することだ」
― シップリサイクリング・アライアンスのメンバーと主な活動は。
「メンバーには、海運会社、船級協会、シップリサイクル協会、シップリサイクル施設、キャッシュバイヤーなどの代表者が含まれる」
「シップリサイクリング・アライアンスは、国際海運に従事する500総トン以上の船舶の安全で環境に優しいリサイクルを推進している。シップリサイクル条約やバーゼル条約のような国際的な規制や、EUやその他の地域・国の規制に重点を置いている」
「主な活動はシップリサイクル条約の改正への対応と、同条約とバーゼル条約の実施と履行の支援、船舶リサイクル業界と海運業界の利害の調整、関連データの収集、業界主導のソリューションの奨励とベストプラクティスの共有、シップリサイクルに関するBIMCO会員へのガイダンスの提供などだ。今後の目標として、バーゼル条約締約国会議に提出する文書の準備などの規制当局の主要な会議に先立って特定のトピックに取り組む専門のワーキンググループを設置する」
― シップリサイクル条約発効による海運・造船業界への影響は。
「BIMCOの見解では、シップリサイクル条約は世界の海運と船舶リサイクル業界の複雑性に国際基準を合わせるうえで重要な役割を果たす。同条約は、船舶の持続可能なリサイクルを確保し、環境への悪影響を最小限に抑え、安全な業務を提供するうえで極めて重要だ」
「海運業界にとって同条約は、船舶のライフサイクル管理における透明性と説明責任を確保するための基礎となる危険物インベントリーの作成など、厳しい要件を課している。BIMCOはこれらの規制の実施と履行を積極的に支援するとともに、業界全体でベストプラクティスの採用を奨励しながら、コンプライアンス文化、世界的に公平な競争条件を育成する役割があると認識している。海運業界はコンプライアンスを重視する業界であり、それは国際海事機関(IMO)の多くの条約に対する高い遵守率によって証明されている。この点で、パリMOUが早ければ2025年7月にも同条約の要件に基づく船舶検査を開始するよう呼びかけているのは喜ばしいことだ」
「新造船の建造で、将来のリサイクルを促進するための材料の申告や宣言、持続可能な慣行の順守がますます必要になるため、造船業界も同条約の規定に適応する必要がある。BIMCOはこれがもたらす課題を認識しつつも、循環型経済の原則を船舶の設計と製造に統合する好機と捉えている。BIMCOは、業界関係者間の協力を推進することで、リサイクル可能な材料の使用、ライフサイクルの温室効果ガス(GHG)算定、船舶の退役戦略の改善といった革新的なソリューションを提唱し、同条約の要件を満たすだけでなく、環境スチュワードシップと資源効率という幅広い目標にも貢献する」
― シップリサイクル条約の発効に当たって海運・造船業界が留意すべきことは。
「バーゼル条約締約国会議の最近の結果が、船舶リサイクルの実務、特にバーゼル条約とシップリサイクル条約の法的枠組みの調整において複雑な状況をもたらした。一部の国は、重複する義務や不透明な優先順位に頭を悩ませている。この曖昧さが、バーゼル条約の管理措置に合わせるか、シップリサイクル条約の船舶リサイクルに特化した措置を受け入れるかのどちらかを選択しなければならないという分断された状況を生んでいる。BIMCOは、この二重性が混乱を招いていることを認識し、両条約間の矛盾を解消し、首尾一貫した国際的な船舶リサイクルプロトコルを確保するため、より合理化されたガイダンスの必要性を強調している」
「バーゼル条約はこれまでのところ海運と船舶リサイクル業界に好影響を与えていないが、シップリサイクル条約は発効前にもかかわらずすでに好影響を与えている。間もなく開始されるIMOの経験構築フェーズでは、各国とオブザーバーが必要に応じてシップリサイクル条約を改善することも可能になる」
「今後BIMCOは両条約の相互作用に関する法的明確化をさらに推進していく予定だ。各国政府がそれぞれの立場を再評価し、競合する存在としてではなく、補完的な制度として各条約のメリットを検討することが不可欠だ。両条約は、環境保護と持続可能な船舶解撤というより広範な目的に貢献することができる。シップリサイクル条約によってすでに基準の改善が進んでる。さらに同条約に基づき、廃船のリサイクルを希望しない国には受け入れを拒否する権限が与えられている」
「BIMCOとシップリサイクリング・アライアンスは、業界関係者間の協力と知識の共有を促進することで、コンプライアンスを簡素化し、利害関係者の優先順位を一致させ、最終的にはシップリサイクル条約の下で世界の船舶リサイクルの課題を前進させる統一的なアプローチを生み出すことを目指している」