2025年6月16日無料公開記事シップリサイクル

《連載》シップリサイクル④
内外航ともに早期のIHM作成推奨
作成支援サービスに注目集まる

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シップリサイクル条約発効に伴い注目されるのがインベントリ(IHM)作成支援サービスだ。有害物質などの情報で構成されるIHMの作成は船主が義務を負うものだが、実際には第1部の作成は、新造船は造船所が、既存船は一般的には船主からの依頼を受けたIHM作成の専門家が請け負う。作成方法については新造船が新船方式、既存船は現存船方式と呼ばれ、新船方式は造船所がサプライヤーらから部品・材料、機器の有害物質情報を集め、作成する。現存船方式は専門家が図面調査や本船確認、サンプル分析で調査する。既存の外航船は2030年6月25日か解撤時のいずれか早い時期までにIHM第一部を、内航船は解撤時までにIHMを作成すればよいこととされているが、IHMは作成に時間を要することなどから関係者らは早期の作成を推奨している。
 

NK、条約対応支援や周知広報に尽力


日本海事協会(NK)では国際海事機関(IMO)でのシップリサイクル条約採択当初から国土交通省や業界と連携して条約対応に向けた準備を進めてきた。2011年には、条約発効後に作成が義務付けられる船舶の有害物質一覧表(IHM)の新造船向けクラウド型作成支援システム「PrimeShip-GREEN/SRM」を開発した。「当時はクラウド型システムがまだ一般的ではなく、先進的な取り組みだった。今では日中韓の造船所で、本システムでIHMを作成することが一般的になっている」(NK環境部の成瀬健主管、以下同)。現存船向けでは同システムの開発と並行してIHM作成トライアルを実施し、現存船IHMの作成と審査のノウハウを蓄積。

また、NKでは12年から解撤ヤードの条約適合認証を開始した。条約の要求事項を満たしていることが確認できた施設に対し、第三者機関として適合鑑定書を発行するもので、現在、インドで67施設、バングラデシュで5施設、トルコで1施設が鑑定書を維持している。「インド全体で110~120の解撤ヤードがあり、他船級の認証も含めると認証ヤードは110を超え、十分条約に対応できる状況だと聞いている。まだ現時点で条約適合施設がないパキスタンについても、現地からNKに認証を依頼したいと審査申込があり、認証取得に向け動き出している状況だ」

IHM準備状況については、NK登録船の約65%がIHMの第1部を作成済みで、NK入級船の85%が新造時に作成している。2021年にEUシップリサイクル規則(EU-SRR)でEU加盟国に寄港する非EU籍船にもIHMの所持を義務化した際に、IHMの作成が進んだことから、シップリサイクル条約前にIHMの準備で大きな混乱はないが、今後は「維持管理要件を周知していく必要がある」。IHMは機器の修理や交換の都度、有害物質の情報を収集して改訂の判断が必要となる。「機器のメンテナンスに伴い保守部品を発注したがメーカーからIHMの更新に必要な書類が送られてこないという話を船主側から聞くこともある。改訂作業が業界に浸透するよう周知に努めたい」(NK環境部の谷口竜也技師)

NKではIHMの維持管理要件をはじめ、シップリサイクル条約全体の周知広報に積極的に取り組んでおり、「シップリサイクル条約の実務に関するオンデマンドセミナー」を公開している。第一弾では条約概要やIHMの作成・維持管理、解撤ヤードの状況を解説。第二弾は国土交通省の担当者による国内法の解説となっており、第三弾は条約対応をサポートする事業者の講演となっている。

シップリサイクルに関する今後の課題として、成瀬主管は内航船の海外売船を挙げる。「内航船は国内では解体されるケースが少ないと聞いている。内航船として運航している限り運航中にIHMは必要ないが、海外売船先の運航形態により、例えば、国際航海資格で運航するとなるとIHMが必要になり、売船時にIHMを要求される可能性がある。一方で、IHM作成自体に通常3カ月以上かかるため、売船先が決まってからでは準備が間に合わない。将来的なリスクを考え、国土交通省では新造時にIHMを作成することを推奨している」(成瀬主管)。

また、外部のIHM作成専門家が30年以降は減少する恐れがあると指摘する。「現存船は条約発効後5年以内にIHMを作成しなければならないことから、専門家はそのニーズに対応しているかたちだ。一方で30年以降は現存船のIHM作成需要が減少するので、その際に内航船がIHMを作成したくとも、IHM作成に対応できる専門家が少なくなっている可能性があるのではないか懸念している」(谷口技師)

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