2025年6月6日無料公開記事

“にっぽん丸”26年5月に引退
商船三井クルーズ、35年の歴史に幕

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 商船三井クルーズは5日、同社が運航するクルーズ船“にっぽん丸”(1990年就航、2万2472総トン)が2026年5月10日の横浜帰港をもって引退することを発表した。同社では現在“にっぽん丸”と“MITSUI OCEAN FUJI”の2隻体制でサービスを提供しており、26年後半には新たなクルーズ船が船隊に加わることが決まっている。“にっぽん丸”引退後、新たなクルーズ船が就航するまでは“MITSUI OCEAN FUJI”1隻体制となる見込み。
 “にっぽん丸”は1990年に就航し、2010年と2020年に2回の改装、リニューアルを経て35年間にわたり活躍した。総航行距離は約533万キロメートル、地球約133周分に相当する。2000本以上のクルーズを実施し、国内外400以上の港に寄港、60万人以上の乗客を迎え入れた。
 “にっぽん丸”の引退前となる26年2月以降のクルーズの予定やイベントは決まり次第発表される。26年4~5月に実施されるクルーズでは、ゆかりの寄港地の食材を取り入れた特別ディナーや、感謝の気持ちを込めたプレゼントを用意する。
 商船三井クルーズでは、“にっぽん丸”の伝統とサービス精神を“MITSUI OCEAN FUJI”や、26年に就航予定の新たな船へと継承していくとしている。26年に就航予定の船は日本籍船になると発表されており、“にっぽん丸”がこれまで実施してきたクルーズを継承する可能性がある。
 “にっぽん丸”はコンパクトな船体を生かし、離島や小規模港にも積極的に寄港。船内では各地の特産品を用いた料理や地域との共催イベントを通じて、土地に根ざした“にっぽん丸らしさ”を追求してきた。こうした取り組みが、地域住民との深い絆を築き上げた。
 その航跡には数々の名企画も名を連ねる。「世界一周クルーズ」は通算9回を数え、「ハワイ・カリブ・アラスカ」や「モーリシャス・インド洋クルーズ」など長期クルーズも人気を博した。女性向けの「Oasisにっぽん丸」や「オペラクルーズ」、「飛んでクルーズ北海道」など、テーマ性の高いクルーズも展開し、幅広い客層に支持されている。また、政府が主催する国際青年交流事業「東南アジア青年の船」や「世界青年の船」にも長年使用され、国際的な舞台でも活躍してきた。
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