2025年3月17日無料公開記事バイオ燃料

《連載》バイオ燃料④
シンガポール・欧州中心に供給地拡大

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日本での補油も


船社がバイオ燃料の使用を拡大する中、調達に問題はないか。「重油燃料並みとはいかないが、ターム契約の場合、1~2カ月のリードタイムがあれば十分に調達可能。シンガポールやARA(アムステルダム・ロッテルダム・アントワープ)エリアを中心にサプライヤーは多い」(商船三井の漆谷禎一燃料GX事業部長)という。

船舶向けのバイオ燃料の供給量は2024年にシンガポールで約88万トン、ロッテルダムで約76万トンだった。バイオ燃料の供給地はこれらの主要なバンカリング拠点を中心に世界中に広がってきている。「重油燃料と比べると供給地はまだ少ないが、シンガポールや韓国、中国、欧州、中東など主要港ではどこでも調達できるようになってきた。当社の主要トレードは概ねカバーできる。日本での供給港はまだ限られるが、国内で補油した実績もある」(川崎汽船・嶋田仁之燃料グループ長)。川崎汽船は昨年、同社グループの横浜港の自営完成車ターミナルで、運航する自動車船“VIKING OCEAN”にバイオ燃料を補油した。

価格はどうか。「B24」(シンガポール補油ベース)や「B30」(ARA補油ベース)のマーケット価格は、重油燃料のVLSFO+150~250ドル程度となっている(2月末現在)。「特にシンガポールにおいては以前はもう少し高値だったが、価格がこなれてきた。供給量が増えたことが背景にあるのだろう。メタノール、アンモニアといったクリーン燃料と比べるとバイオディーゼル燃料は安価で、炭素強度は『B24』でLNG並みで(重油燃料と比べて)2~3割低い。熱量当たりの価格はLNGの方が安いこともあるが、LNG燃料は船員要件や二元燃料化するための初期投資が大きい」(商船三井の漆谷GX事業部長)、「マーケット次第だが、他の次世代燃料と比べると比較的競争力がある。『B24』の場合、同じ熱量に対する価格はLNGと同程度だが、ドロップインで導入できるので、新造時のLNG燃料化追加CAPEXを考慮すると、トータルコストの観点では安くなるバイオ燃料は非常に競争力がると言える」(川崎汽船・嶋田燃料グループ長)

バイオ燃料の価格が以前と比べて低下した背景の1つに、原料の多様化で供給量が増加していることが挙げられる。「今も舶用燃料として供給されるバイオディーゼル燃料の原料の太宗は廃食油だが、それ以外も、POME(パーム油の搾油工場で発生する廃液)、食品廃棄物、バイオ残渣など、多様な原料を基にしたバイオディーゼルが増えてきた」(商船三井の山川燃料GX事業部チームリーダー)

それでも従来燃料と比較するとコストは高い。「バイオ燃料のコスト負担について荷主からの理解を得られつつある。船社の立場では燃料コストは荷主に負担いただくのが望ましいが、黎明期はステークホルダーがコスト負担し合うことでバイオ燃料の導入を推進していくのが現実的ではないか」(船社関係者)、「基本的に環境負荷にかかるコストは最終的なサービス・製品価格に転嫁してエンドユーザーが負担するものと考えている。それを一民間企業が負担するのは難しい。バイオ燃料の追加コストについては顧客に負担いただくことを基本にしているし、負担いただくことへの理解をいただいていると思う」(別の船社関係者)
 

将来の供給力が懸念材料


バイオ燃料は導入のハードルが低く温室効果ガス(GHG)削減効果も認められているが、将来の燃料ポートフォリオにおいて大きなポジションを得ていない。その理由は将来の供給量の不透明さにある。

供給網が広がってきたことで、足元では主要な港で必要な量を調達できる需給環境にあるようだが、今後は供給面がネックになる可能性がある。「バイオ燃料の最大の課題は原料の供給量が限られていること。今後、国際海事機関(IMO)で海運脱炭素に向けた新たな削減対策が合意されると、バイオ燃料の需要が拡大するだろう」(川崎汽船・嶋田燃料グループ長)

実際にバイオ燃料の供給能力はどれくらいか。日本海事協会の「ClassNK代替燃料インサイト(Version2.2)」によると、経済協力開発機構(OECD)/国連食糧農業機関(FAO)のデータで、21~23年の生産量が年平均5400万トンだった。大半が陸運向けとされる。船舶燃料として使用できる廃食油由来のものがこのうち27%の約1500万トン。IMOの暫定ガイダンスでどのようなバイオ燃料であればGHG削減効果が認められるかが決められており、IMOの燃費格付け(CII)制度に関しては、国際的な認証制度の持続可能性基準を満たし、かつ、燃料製造を含むライフサイクル全体(WtW)のGHG強度が「33以下」であるものに限られる。海運EU-ETSとFuelEUマリタイムでもGHG排出削減効果が認められるバイオ燃料の要件があり、21年以降に稼働を開始した施設で生産されたバイオ燃料に関しては、IMOの暫定ガイダンスと同等だ。「GHG強度33は、基本的に廃食油由来でないと満たすことが難しい」(NKグリーントランスフォーメーションセンターの渡辺博之氏)。本来は廃棄される廃食油を原料とすることで低いGHG強度が設定されているからだ。

バイオ燃料全体の生産量は、北米、南アジア、東南アジアを中心に拡大が見込まれ、2033年までに7100万トンに増加するとOECD/FAOは予測する。足元のシェアと同様に27%が廃食油由来と仮定すると、船舶に使用できるバイオ燃料は1900万トンに達する見通し。足元の国際海運の使用量40万トン(23年、IMO-DCSベース)と比べて余力があるように見えるが、バイオ燃料の供給力について海運関係者から懸念の声が挙がるのは、航空機をはじめ他の輸送モードと原料の競合があるからだ。「航空業界でも廃食油由来のSAF(持続可能な航空燃料)の需要が高まってくるはずであり、より高い価格で航空業界に販売できるとすればそちらに流れていく。そうなると、船舶用に回ってきにくくなる。日本の廃食油も半数近くが海外に販売されていると言われる。海運業界向けにどれだけ確保できるかが重要だ」(NKの田中玄晴・環境部担当主管)
(つづく)

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