2024年12月25日無料公開記事内航NEXT

一般大卒者・転職者の養成拡大
国交省、海技人材確保のあり方中間まとめ

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 国土交通省は24日、海技人材の確保のあり方に関する検討会の中間とりまとめと、海技教育機構(JMETS)の中期的なあり方に関する検討会の5つの論点に対する方向性の骨子を発表した。中間とりまとめでは、一般大学卒業者や陸上からの転職者の養成ルートや水産高校との連携を強化するのに加え、地方公共団体の無料職業紹介事業の導入といった船員職業安定制度の見直しを盛り込んだ。また、骨子では「訓練の質を確保するためには、帆船を含め1隻程度の大型練習船の減船はやむを得ない」とし、養成規模の維持と練習船の代替建造の必要性に触れた。
 中間とりまとめでは、①海技人材の養成ルートの強化②海技人材確保の間口の拡充③海技人材の養成・就業拡大に向けた訴求強化④海技人材の多様な働き方の促進と職場環境の改善⑤新燃料に対応可能な海技人材の確保・育成—の5つの方向性を示した。
 ①では近年増えている一般大学卒業者や陸上からの転職者向けの養成ルートを拡大する。また、従来多くの船員を輩出してきた水産高校やJMETS傘下の教育機関についても応募者確保などに取り組む構えだ。
 ②でも陸上からの転職者を念頭に置いた取り組みが挙げられ、ハローワークと地方運輸局の連携が盛り込まれた。全国5カ所程度の地方運輸局とハローワークをそれぞれ選定。地方運輸局職員がハローワークに定期的に出向き、船員の求人・求職のあっせんを行う
労使で意見が二分していた船員の有料職業紹介は今回盛り込まず、別の場を設けて導入の適否を検討する。
 これら中間とりまとめを踏まえ、制度の見直しを伴う対応策については関連法の改正も視野に入れて早急に制度設計に取り組む。2025年夏をメドに最終とりまとめを行う予定だ。
 JMETSのあり方の5つの論点に対する方向性の骨子では、自動運航や新エネルギーなどの高度な訓練は就職後に採用船社で行うことが適当とし、社船と練習船の役割分担を行うことで練習船の余席を拡大させて多科配乗を改善することを示した。また、両用教育は一部にニーズがあることを踏まえて座学まで両用教育を行う。その一方で、乗船実習は航海、機関のいずれかを選択することとする。
練習船隊のあり方については、船の老朽化や教員不足により訓練の質を確保するためには1隻程度の練習船減船はやむを得ないものの、代替案として社船実習拡大や工場実習の活用促進を示した。また、養成規模を維持しつつ、3級海技士と4級海技士を養成する練習船を分離し、多科配乗の改善などを図るためには、全体としては減船しつつも、練習船の代替建造は必要とした。
 同日開かれた大臣会見で、中野洋昌国土交通大臣は「船員の不足が深刻化している。海上での労働という船員特有の職場環境や海技資格の取得に所要の教育と期間が必要なことを踏まえると、陸上とは異なる視点での対策を早急に講じていくことが必要。今後海事関係者や関係省庁と連携しながら方策の具体化に向けた取り組みを進めていく」と話した。

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