2024年10月25日無料公開記事内航NEXT
「2024年問題」船社の現在地
《連載》「2024年問題」船社の現在地<下>
RORO船へのシフト限定的
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スペースの有効活用というフェーズに入ったフェリーとは対照的に、RORO船へのモーダルシフトは盛り上がりに欠けているようだ。国内貨物の減少によりトラックドライバー不足の影響が少なく、RORO船が主に取り扱う無人シャーシの需要が拡大していない。行政によるシャーシ導入への助成など後押し要因はあるものの、当事者である船社や物流事業者からは制度活用の難しさを吐露する声も上がる。
■国内貨物量減が影響
2024年問題を契機としたRORO船への輸送シフトは現時点では関係者の期待を下回る。あるRORO船社の関係者は「一部では2024年問題の影響から貨物が増えた航路もあるが、想定よりも恩恵は小さい」と肩を落とす。別の船社の幹部も「他社と情報交換しても実車が減って空車が増えていると聞く。貨物量が戻っておらずトラックドライバーが減っても運べてしまっているのが現状だ」と語る。
NX総合研究所が4日に発表した今年度の経済と貨物輸送の見通しによると、国内貨物総輸送量は今年度通年で1.0%減で、3年連続のマイナスを見込む。上期0.5%減の後、下期は1.5%減とマイナス幅が拡大する予想だ。こうした動きはトラックドライバー不足の影響を小さくし、RORO船が主に取り扱う無人シャーシのニーズを抑制する要因となる。「10トントラックから無人シャーシへの移行はロットやリードタイムなど、これまでの商慣習を全て変えることにつながる。ドライバーが足りている状態だと多大な労力をかけてまで無人シャーシを導入しようと荷主は思わない」。
貨物量が少ない中、有人トラックの柔軟性へ注目が集まっていることもシャーシ化のハードルを高くしている。とあるフェリー船社の関係者は「帰り荷の確保という点では有人トラックが有利。原則として港に戻らなければならないトラクターヘッドやシャーシと異なり、有人トラックは発着港にとらわれず貨物を獲得できる。全国的に荷量が減っている中、フレキシブルに動ける有人トラックのメリットが改めて認識されている」と説明。商慣習の見直しの手間だけでなく、貨物の獲得という観点からも無人シャーシの導入が遠のいている。
■助成で荷主が運賃下げ要請
こうした向かい風の要因はあるものの国はシャーシ化を後押しするため補助事業などを展開しており、一定の導入実績が出ている。その一方で、船社や物流事業者からは制度の使いづらさを指摘する声も上がる。とあるRORO船社関係者は「シャーシなどの設備・機器導入に対して半額を助成する『モーダルシフト加速化緊急対策事業費補助金』を受けるには荷主企業とともに協議会を立ち上げて物流総合効率化法に基づく認定が必要になる。荷主は国から補助金が出るので運賃が下がると期待してしまう。しかし、シャーシの価格は年々上昇しており、補助金があっても運賃を下げることはできないのが実情だ。募集期間の短さや応募書類の煩雑さから申請を諦める物流事業者も多い」と説明する。
現時点ではフェリーとRORO船で明暗の分かれる海運へのモーダルシフトだが、RORO船各社も需要の受け皿になることを狙う。「トラックドライバーの残業規制の影響は早ければ年末か年度末に顕在化してくる。そこから有人トラックのフェリー乗船がさらに加速し、その後RORO船が求められる局面が来る。その機会を逃さないためにサービスを磨く」(RORO船社関係者)。モーダルシフトの需要が本格的に表れるタイミングでRORO船の真価が発揮されることになりそうだ。
(連載おわり。伊代野輝が担当しました)