2022年10月26日無料公開記事内航NEXT

内航船オンライン服薬指導の初事例
日本調剤/ゼクト、八重川海運所有船で

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 調剤薬局を全国展開する日本調剤は10月7日、ITソリューションの開発・販売を手掛けるゼクト、東京都教職員互助会三楽病院と連携し、徳島船主の八重川海運が所有する内航船を対象に国内で初めて船上オンライン診療・オンライン服薬指導を一気通貫で実施した。ゼクトが提供するオンライン診療の専用端末・システム「ZMO」(ゼクト・メディカル・オンライン)を利用し、長期間乗船する内航船員の治療・服薬をサポートする体制を整えた。
 今回、オンライン診療を八重川海運の内航船が大分から苫小牧に向けて航行中の10月7日に三楽病院とつないで行った。続いて日本調剤の御茶ノ水橋口薬局に処方箋を送付し、同薬局と本船をつないでオンライン服薬指導を実施。次の寄港地の苫小牧に薬を送付し、同月10日に寄港地で薬を受け取った。
 日本調剤は24日、船上オンライン診療・服薬指導導入の背景と初事例の内容、今後の展望などを関係者が講演するオンライン勉強会を開催した。
 八重川海運の村田泰代表取締役は「内航船は船員の高齢化による慢性疾患患者の増加、孤立した環境、運航スケジュールが不規則といった課題があるが、そのような中で船員に健康で元気に下船し帰宅してもらうことが船舶所有者の使命だと考えている。このため、海上にいても診療と服薬指導を受けることができ、薬を届けて頂けるこのスキームの利用に至った」と説明。同スキームのメリットとして、船員が船を離れずに診療を受けることができる、寄港地が決定してから最寄りの病院を探す手間が省ける、病院までの移動がなくなるため感染リスクと交通費を減らせることなどを挙げ、「オンライン診療・服薬指導の仕組みを導入することによって船員が安心して治療・服薬でき、さまざまな疾患の早期発見・治療で重篤化を防ぐことを期待している」と語った。
 同スキームを利用した船員(船長)の声を紹介し、「初めてオンライン診療・服薬指導を経験するため実施前は手順が不安だったが、スムーズに行うことができた。また、医師・薬剤師の顔が見えるので安心感もあった。船を離れて病院に出向くとなると緊急連絡などができなくなり、他の船員に負担がかかるのでは、という不安を抱いていたが、職場である船を離れることなく薬が届くのが有難い」と好評だった。
 ゼクトの世古口学代表取締役は同社が提供するZMOについて説明し、同サービスの内航船への提供に至った背景について「内航海運は国内物流の4割を占める非常に重要な物流インフラだが、この業界を調査したところ、高齢化と慢性疾患の罹患率が非常に高いことが分かったので、これに対して何らかの貢献をしたいと考えた」と述べた。海上でのオンライン診療・服薬指導の課題の1つである通信環境を確認するため、八重川海運の協力を得て各海域の電波強度の測定調査を2021年10~11月に実施。陸から離れた際に通信が乱れることはあるが、沿海を航行している間は問題なく通信が行えることが分かり、オンライン診療・服薬指導が行えると判断した。世古口氏は「2023年4月施行の内航海運の産業医選任制度の中での健康相談などにオンライン診療のビデオ通話の仕組みが有効活用できると考えている」と語った。
 日本調剤薬剤本部薬剤企画部の馬場克典次長は、「内航船員は長期乗船、長時間労働、運動不足、深夜の当直などのさまざまなストレスが重なることから、生活習慣病への対応が課題。オンライン診療・服薬指導を利用することで、船員の方々が安全に業務を行えるような健康状態の維持に貢献できると確信している」と強調した。今回の事例でオンライン診療を行った三楽病院の伊藤契外科統括部長は、「ご本人と確実に対話して状態を確認することができ、通常の診療のような感じで行うことができた。規則的な診療によって船員の良い健康状態保つという意味で発展性を感じる」などと感想を述べた。

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