2022年10月12日無料公開記事内航NEXT フェリー座談会

《連載》フェリー座談会④
洋上通信整備で船員不足対応
オーシャントランス×四国開発フェリー×商船三井フェリー

<座談会参加者(社名五十音順)>
オーシャントランス 髙松勝三郎社長
四国開発フェリー 瀬野恵三副社長
商船三井フェリー 尾本直俊社長
<司会>
海事プレス編集長 中村直樹

■収受運賃に合わせた経営へ

 ― フェリーの将来性についてどのようにお考えか。
 瀬野「BCP(事業継続計画)による輸送需要は高まると思うが、外航海運が相手としている世界80億人のマーケットに対して、われわれ内航海運は国内1億2000万人というマーケットで勝負している。外航海運は現在、好調に推移しているが、フェリーのような内航海運が生き残っていくためには新しいビジネスモデルを作っていかなければならない」
 髙松「今は収受できる運賃に合わせた経営を行っていく時代となった。フェリー業界が生き残るためには、生産性の向上を図るしかない」
 尾本「フェリーやRORO船の特徴である荷役機械を使わないで荷役を行える柔軟性は素晴らしいコンセプトだと感じている。一方で、海上交通安全法の全長200m以上の船舶に対する規制など、さまざま制約が存在するのも事実で、こうした規制が見直しされれば、さらに効率的な船にできるかもしれない。まだまだ利用価値が高い輸送モードだと考えている」
 髙松「フェリー・RORO船の岸壁は延長200m・水深7.5mが基本となっており、この岸壁に合わせて船を建造する必要がある。しかし、こうしたルールが足枷になっているという意識があまりないと感じている。規制やルールは成熟すると利権が発生する。利害調整に膨大な時間がかかるため、日本で規制緩和を進めることは極めて難しくなっている」
 ― 内航分野で規制を見直していく必要はあるか。
 瀬野「大いにある。例えばAIS(船舶自動識別装置)の問題が一つ挙げられる。整備が実現すれば、デジタルな安全運航が可能になるのでは」
 髙松「フェリーやRORO船といった大型の内航船はAISが搭載されているが、小型の船は搭載されていないケースも多い。レーダーで捕捉できないため、安全運航の観点からも危険だ。全ての小型船にAISを搭載すべきだと考えている」

■生産性向上の鍵は洋上通信

 ― 生産性を高めていくためには何が必要か。
 瀬野「武器になるのが、洋上通信回線の構築だ。これが無ければ何も始まらない」
 尾本「同感だ。船の上での生産性向上は通信環境が整わないと難しい。今の仕事のスタイルでいくら生産性を高めようとも限界がある。陸上並みの通信環境になれば、陸上から船舶運航支援などもできるようになるため、劇的に変わると考えている」
 ― 現在の洋上通信の状況は。
 尾本「瀬戸内海のフェリーでも電波が届かない箇所がある。当社の北海道航路では津軽海峡を越えた辺りで途切れることもある。電波が弱ければ大容量通信を行うことはできない」
 瀬野「乗客向けのサービスで使う通信だけではなく、業務用で使用できる環境が整わないと生産性向上の議論にもならない」
 尾本「生産性を上げるためのインフラがそもそも整っていないことが問題だ。衛星を使って通信容量の大きいサービスを始めようと取り組む動きがあるが、ロシアのウクライナ侵攻の影響も受けている。ただ、イーロン・マスク氏やジェフ・ベゾス氏が衛星の打ち上げ計画を進めており、彼らなら本気で実現することができるかもしれないと期待している」
 ― 船員不足が問題視されているが、どのようにお考えか。
 髙松「人手が足りないと言われているが、足りないならば足りない中で回していけば良い。将来的に洋上通信のインフラが整えば、陸上から支援してカバーすることができると考えている」
 瀬野「フェリー業界も誕生から50年以上が経過した。世代が移り変わる中で、新しい人が入ってこない産業であるならば、滅びるしかない。フェリー業界が生き残るためには、やはり人が重要だ。一方で今後は、少ない人数で安全運航を行い、会社を運営できる体制を整えていく必要がある。そのためにはデジタル化の推進が不可欠となる」
 尾本「髙松さんと瀬野さんがお話したように、働き方改革を実現していくしか方法はない。人手不足は内航海運のみならず他の業界も含めて日本全体が直面する最大の課題だ。内航海運業界で現状の環境のまま働き方改革を進めても、人材不足を補うことは無理だろう。内航船員不足に対応するためのデジタル化や通信環境の整備は、外航よりも切実な問題として捉えている。既に外航船を中心として陸上から運航支援する技術の開発は進んでいる。内航でも通信環境が整うまで待つのではなく、今から準備を進めておき、通信環境が改善すると同時に変えていくという意識で取り組んでいく必要がある」
 ― 本日はありがとうございました。
(この連載は、今回で終了します)

髙松社長

瀬野副社長

尾本社長

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