2022年8月12日無料公開記事内航NEXT 内航キーマン

《連載》内航キーマンインタビュー⑦
輸送効率化へ来年大型船投入
鈴与海運/鈴木英二郎社長

 鈴与海運は来年、同社としては過去最大船型となる2500トン型(400TEU積み)の内航コンテナ船を投入する。外貿コンテナ航路の母船集約化が進むなか、より大型船を投入して輸送効率の改善を図る。一方で鈴木英二郎社長は「母船の大型化と集約を背景にバース混みが激しくなっており、安定した内航輸送が困難になっている」と指摘。効率化に向け、港側との連携の重要性を訴えた。

■コロナ禍で輸送需要が増加

 ― 国内のフィーダー輸送需要はどのように推移しているか。
 「もともとは当社の輸送実績は年間15万TEU前後で推移していたが、2019年度はそこからさらに増えて16万2000TEUだった。パンデミックが始まった20年度はそこから減少したが、最終的には15万6000TEUとそこまで大きな落ち込みではない。コロナによる需要減は比較的短期間で終わり、20年5月・6月は大きく減少したが、その後は回復が始まって下期にはだいぶ忙しくなった。さらに21年度は約17万TEUと過去最高を更新している」
 ― 輸送量が伸びた背景は何か。
 「輸送量の増減は外航コンテナ船社の動向に左右される。要因としてまず挙げられるのはやはり母船の遅延や抜港で、これに合わせて臨時の輸送需要が急に発生するということがしばしば起こっている。もう1つは空コンテナの回送需要だ。これまでは母船が日本に寄港する際、一緒に港間の空コンテナ回送を行っていたのだが、抜港や遅延でそれができなくなったため、空コンテナを運んで欲しいという需要が増えた。最近は少し落ち着いてきたが、こうした抜港と空コン対応を背景とする輸送需要の増加は、20年後半からずっと続いてきている。さらに昨年から、釜山港の混雑を背景に国内フィーダーを活用し、日本主要港から輸出入する動きに拍車がかかった。本来なら、釜山経由で地方港まで直接輸送されるはずの貨物が釜山で滞留してしまったため、国内主要港まで輸送した後に、再度われわれの手で最終目的港まで輸送する、といった具合だ」
 ― コロナ前までは厳しい事業環境が続いた。コロナ禍で輸送量は伸びたが、事業環境としての変化はどうか。
 「確かにイレギュラーな輸送と空コンテナの横持ち需要の増加で輸送量は増えた。しかし、運賃については、大幅に上昇した外航コンテナ運賃と比べ内航の運賃上昇は非常に小幅で、未だ採算ラインを下回っている航路が多い。それでも競合する地方港発着の釜山フィーダー航路の運賃上昇や、母船の運賃上昇などを背景に環境が改善しているのは間違いない。2020年のSOx排出規制の発効で燃料油サーチャージが普及したことも、収支安定化の大きな要因だ。長年、燃料油価格の高騰に苦しめられていたが、これを機にサーチャージ課徴が可能となり、燃料費高騰のリスクを抑制できるようになってきている。ただ、現在のサーチャージ額がC重油を前提に設定されているのに対し、最近は船員の作業負荷低減のためよりA重油の利用率が高まっており、その点では負担増となっている。またコンテナ船と比べて在来船では、まだまだサーチャージが浸透しておらず、ここも引き続き課題だ」

■船員確保、場所も重要に

 ― オペレーション面ではこの間、どのような負荷が強かったか。
 「今でこそ抜港はだいぶ落ち着いてきたが、一時期は母船寄港の回数が、本来の予定から半減してしまう時期もあった。抜港となると、その週に当社が運ぶはずだった貨物は一気にゼロになってしまう。一方で遅延や抜港の影響をリカバリーするため新たな輸送需要が急遽生まれたり、さらに空コンテナ回送需要も増え、増えるにしても減るにしても急激な変化に常に対応する必要が生じている。そのため配船担当者への負荷も強まっているのは間違いない。海外のコンテナ港でも港湾労働者不足が問題になっているが、日本でも同様の問題は発生しており、主要港・地方港ともに作業員を確保できなかったため荷役が遅れるということが実際に起きている。母船スケジュールが不安定したことで配船効率も落ちており、例えば仙台/京浜間の場合、以前なら最低でも週2往復、うまくいけば3往復も可能だったが、現在は1往復半がせいぜいだ。もともと当社は在来船部門が中心だったので、臨機応変の配船繰りのノウハウはそれなりにあると思うが、それでも難しい対応を迫られている」
 ― 母船に接続する必要上、どうしても待ちが発生してしまう。
 「以前から課題意識を持っているが、やはり港側との連携は非常に重要だ。依然として母船、大型船荷役が優先で、内航輸送の効率化がなかなか進まない。また母船寄港が減り、1つの母船に複数船社が相乗りする傾向となったので、これに合わせて地方港側のCYカットが軒並み木曜・金曜に集中してしまっている。週末の母船寄港に合わせなければならないので、その時は混雑し、一方で週前半は貨物がない、ということも多い。一極集中化が進んだことでバース混雑も一層顕著になっている。内航船社としての義務を果たそうにも、なかなかそれが難しいという現実がある」
 ― 船隊整備についての考え方はどうか。
 「昨年12月に749トン型の“こはく”が竣工し、現在は12隻体制だ。一時は10隻を下回っていたが、輸送需要の回復で運航船隊も増えてきている。また、これまでは749トン型(204TEU積み)が最大船型だったが、新たに2500トン型(400TEU積み)の建造を決定した。第1船は自社船として23年10月に竣工予定で、2船目は用船で25年に竣工する予定。遠洋航路の母船寄港便数が減少と大型化傾向で、1回当たりの貨物量のロットが大きくなっており、既存の船型では運びきれなくなりつつある。京浜/仙台航路では現在、同じスケジュールで2隻同時に運航し同じ母船の貨物を運んでいるが、大型化すれば輸送コストの低減が可能になる。設計としては比較的オーソドックスだが、可能な限り省エネ化や積載効率の向上などを目指している」
 ― 船員不足問題について鈴与海運としての考え方は。
 「当社では若手船員の採用が比較的進んでおり、また船員の供給元として清水の海上技術短期大学と深く連携して、毎年定期的に若手船員を雇用している。ただ海技教育機構でも、募集に対して応募が少ないと聞いている。清水は東京に近いこともあって比較的応募人数が多いが、高校部門の館山、口之津、唐津では倍率が1を下回り、成り手が減ってきている。人口減が進むなか、こうした地域では若手確保が難しくなっているのではないか。職業としての船員の魅力自体は確かに上がってきており、待遇面では一般的な職業の同世代に比べてかなり高く、休暇も以前より短いサイクルで取れるようになってきた。比較的長期で、まとまった休暇が取れる点を魅力と捉える若い世代もいるので、アピール強化と同時に教育機関の設置場所は再考の余地があるのではと思う。女性が働きやすい環境という点ではまだまだ改善の余地はあるが、当社の運航船の中には女性が船長の船もある。決して将来的に暗い話ばかりではなく、やり方次第ではないだろうか」
(聞き手:小堺祐樹、兼武理保子)
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