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2026年1月27日無料公開記事

サクション帆、アジアで導入拡大へ
バウンド4ブルー、資金調達で供給体制を拡張

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 スペインのエンジニアリング企業バウンド4ブルー(bound4blue)は、サクションセイル方式の風力推進装置「eSAIL」の供給能力・導入体制を強化している。このほど4400万米ドルの資金調達を完了し、欧州・アジアで供給体制や導入後サポートの拡充を進める中、昨年6月にシンガポール、同9月には上海に拠点を設け、アジアでの対応力を高めている。日本市場では丸紅と連携し、船主や造船所を中心に導入に向けた協議を進める。チーフコマーシャルオフィサー(CCO)のダニエル・マン氏と、アジアのセールスダイレクターのロニー・ワーゲ氏 に、アジアでの取り組みや今後の展開について聞いた。
 eSAILは、翼形状の帆に吸引を用いて揚力を高め、推進力を得るサクションセイル方式の風力推進装置だ。ダニエル氏は「単位面積当たりの揚力が大きい」と述べ、小型化で船橋からの視界や船体側の構造・基礎への影響を抑えやすい点に加え、吸引量を風況に応じて調整して電力を抑えられる点を強みに挙げた。製造拠点は中国とスペインに置き、生産能力は中国が年100基、スペインが年60基程度という。「需要に応じて増強できる」とし、需要が見えてくれば日本や韓国での製造も検討する考えを示した。
 導入状況については、eSAILを商船7隻に搭載済み。累計受注は40基を超え、今後20隻の商船に搭載を予定していると説明した。アジアの具体例としてロニー氏は、海運大手イースタン・パシフィック・シッピング(EPS)向けにレトロフィットの初号案件を実施し、同社向けの2件目として中国で建造中の新造船への搭載にも取り組んでいると紹介。さらにBWエピック・コサンが保有するLPG船への導入案件も進めていると述べた。
 新たに確保した資金4400万米ドルの主な用途として、供給網を支える人員・体制の強化、品質保証やサプライヤー管理など生産支援の拡充、製品改良を担うエンジニアリング、実船データを扱うパフォーマンス機能、納入後のメンテナンスやカスタマーサービスの強化を挙げた。中国では現地のサプライチェーン管理メンバーを、現在の2人から2月末までに10人規模へ増やす計画も示し、生産能力とアフターサポートを並行して厚くする考えを語った。
 国際海事機関(IMO)の温室効果ガス(GHG)削減に向けた中期対策(ネットゼロ・フレームワーク=NZF)の採択延期について、ダニエル氏は「脱炭素に向けた流れは変わらない」との見方を示した。欧州の燃料油規制FuelEUマリタイムなど地域規制が先行する局面を念頭に、「燃料の種類を問わず、燃料消費量を減らすニーズは強い」と指摘。燃料戦略が定まらないほど、風力推進による燃費改善策の価値は高まるとの考えを示した。その上で「風力推進は2ケタ%の削減が見込める有力な選択肢で、数少ない実装可能な解の1つだ」と強調。風力推進市場はこの数年で拡大しており、足元でも成長が続いているとした。
 導入時は、効果試算から設計、船級協会との調整、船体側の準備、据付、試運転、性能確認までを支援する。造船所での準備作業や据付・コミッショニングには同社チームが立ち会い、準備が整えば帆の搭載は1基あたり半日程度で可能とした。運用後も遠隔で稼働データを確認して助言し、必要に応じて訪船対応や乗組員のトレーニングを行うという。
 ロニー氏は日本市場を「重点市場」と位置付け、丸紅と連携して船主・造船所への提案を進めている。日本では造船所や船主に加え、用船者、金融、船級など関係者が多層に関わるとして、ダニエル氏は「点をつなぐ役割が重要になる」と話した。今後は、2月の訪日と4月のSea Japan出展を予定し、日本市場での展開強化に向け、中長期で取り組む考えを示した。
 データ活用では、実船からの稼働データを蓄積して性能改善に反映するほか、ウェザールーティングとの組み合わせにも言及した。外部のルーティングサービス側に自社技術の特性を組み込み、ETA(到着予定時間)などの条件を踏まえつつ最適な風況を取り込めれば、削減効果の上積みが見込めるとした。両氏は、船舶の設計・運航支援システムを手掛けるナパ(NAPA)との連携にも触れ、データ活用を含む協業の広がりを示した。

ロニー氏

ダニエル氏

  • 増刊号シンガポール2025
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