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2025年12月1日無料公開記事洋上風力発電

「新造船から洋上風力転換進める」
住友重機械・渡部次期社長、余剰能力でブロック協力

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 住友重機械工業は11月27日、渡部敏朗取締役専務執行役員CFOが新社長に就任するトップ人事を発表し、同日夕に記者会見を開催した。渡部氏は造船事業について「撤退の方針は変えていない。洋上風力事業への転換を計画通り進める」とし、「その過程でメガブロックをはじめとした海洋構造物の請負製造は是々非々で判断し、協力していく」との考えを示した。

 会見では下村社長が社長在任期を振り返り、「2019年4月に社長に就任し、コロナ禍、鋼材や半導体不足など新たな問題もあり、業績確保に大変だったが、現在は稼ぐ力の回復に向けて歩みを進めている。次期中計策定に向けて新経営陣にバトンタッチする判断をした」と語った。後任の渡部氏について「財務・企画管理部門の経験が長く、多くの事業ユニットで企画管理部長を務めてきた。特に印刷機械事業の合理化、船舶部門の再構築、住友建機再生計画に携わった経歴があり、これらの経験は当社が進める新常態に適した変革に適任と言える」と話した。
 渡部氏は抱負の中で「ポートフォリオ変革の加速」を挙げたうえで、縮小だけではなく、半導体分野をはじめとした成長事業への投資もしていきたい」と語った。撤退を表明している新造船事業について「現時点で撤退の方針は変えていない。メガブロックの請負製造などは余剰の能力の範囲で協力していく」との考え。米軍向け修理船事業やゴライアスクレーンの製造事業は引き続き注力していく方針を示した。
 このほか会見の発言要旨と一問一答は次の通り。
<下村社長>
 ― 渡部次期社長の人物像について。
 「渡辺さんとは私が社長に就任した時から財務本部長を務めており、そこで関わる機会が最も多かった。人物像は冷静沈着、バリュアブルで自分の信念をしっかり持っている。困難な状況に直面したときに的確な判断力と行動力で解決し、周囲の人と良好な関係を築ける資質があり、“選択と集中”を進める上で適任と思う」
<渡部専務>
 ― 抱負。
 「現在進めている変革、資本市場との対話を基盤としながら、その変革を進めて企業価値向上を加速させることに尽きる。私がまず取り組むのは、主力事業の収益性回復と施策の実行、ポートフォリオ変革のスピード加速と将来のあるべき姿を明確に示すこと、重点投資領域の事業成長を加速させて事業価値と社会価値の両立を実現することの3つ。資本市場から厳しい評価を受けており、強い危機感がある」
 ― 撤退を表明している新造船事業は、政府の支援策や日米造船協力など撤退を決めた当時と環境が大きく異なっている。新造船事業の今後についてどのように考えているか。
 「現時点で撤退の方針は変えていない。造船業は建造効率を上げてこそ成り立つ事業と考えているが、撤退を意思決定した時点で事業をかなり縮小した状態で運営していた。造船業が評価されてもわれわれが主体的に売れるものは少ないのではないかと考えており、洋上風力関連への転換を計画通り進める。その過程で最近受注したようなメガブロックなど海洋構造物の請負ができるのであれば、是々非々で考えていく方針だ。余剰の能力の範囲でできるところをまずは協力していく。将来大きな変化があれば方針を修正することもあるが、現状は考えていない」
 「当社の新造船事業は長期的に赤字体質を引きずってきた。住友重機械マリンエンジニアリングとして分社独立時にはアフラマックス・タンカーで年間6隻程度の建造隻数で利益を出すという方針でスタートし、しばらくは奏功した時期もあったが、2010年代以降は船価・為替の問題もあり、赤字額が大きくなった。当時はミニマム建造体制の形で年間3~4隻体制に縮小し、それが長引いた結果、建造能力自体がかなり落ちてしまった。国内の造船専業大手も多くの隻数を建造する中で利益を上げており、われわれは今後船価が上がったとしても事業採算的には合わないという判断をした。住友重機械マリンエンジニアリングは従来の造船子会社という視点ではなく、環境・エネルギー関係の事業をとして手掛けるセグメント全体の取り組みの中で、横須賀の能力を使いたい」
 ― 洋上風力関連事業の市場環境をどのようにみているか。
 「現状は全体の計画が進まない、あるいはコストの問題から撤退する事業者もある中で、当初の想定よりも立ち上がりが後ろ倒しになっていると認識している。全体のボリュームや、国全体のサプライチェーンを見極めながら今後の事業性を検討している。国としては何らかの形で投資する方向性は間違いないと考えており、われわれは事業として成立する形で参画できるか見極めていきたい」
 ― 経済安全保障や日米安全保障の観点からも造船業が注目されるなか、修繕やゴライアスクレーンの製造など新造船事業以外に手掛ける事業の方針は。
 「横須賀には米軍基地が近くにあり、修理船事業はわれわれが実際に手がけている。体制を強化する形で取り組んでおり、できる限りの努力をしていく」
 「造船所向けの大型クレーンは、多くをわれわれが生産して納入させていただいてる。近年では以前からなさまざまな補助金を使ったクレーンの発注も増えており、クレーン設備の生産ではわれわれも最大限の努力をしている。クレーンの製造は新居浜工場がメインで生産能力には限界もあるが、グループ内で近隣の西条工場、横須賀事業所でも過去にクレーン関連の製造を手掛けていたこともある。クレーンの製造事業はわれわれとして強みを持つ部分なので、具体的な投資計画やクレーンの発注計画が明確になってくれば、こうした調整も検討しながら取り組んでいきたい」
 ― メガブロックの受注時など造船関連の話で株価が上昇する局面も多く、資本市場の期待も高まっているようにも感じるが、どのように受け止めているか。
 「そうした動きや期待は認識しているが、過去には造船を理由に評価してもらえなかった時期もあり、一時的な上昇だけでは経営判断はできない。当社の4つのセグメントのうちメカトロニクスセグメントのコンポーネント事業、インダストリアルマシナリーセグメントの半導体関連、射出成形機事業に技術や経験の強みがあり、成長分野を中心に強くしていきたいという考えがあり、その部分では資本市場にも賛同いただいていると考えている」

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