1. ニュース

2023年11月10日無料公開記事

最長で28年初めまで線表確定めど
国内造船所、3年先の26年船台が希少に

  • X
  • facebook
  • LINE
  • LinkedIn

線表確定はブーム期並みの先物に(写真=ブルームバーグ)

日本の造船所の線表確定が最長で4年以上先物まで進んでいる。中小型バルカーを主力製品の1つとする造船所のうち、最も早い造船所では2028年はじめまでの仕事量にめどを付けた。このほかにも27年納期の船台もめどが付きつつある造船所や建造工場があり、4年以上先まで手持ち工事を確保した造船所が複数ある状況だ。その一方で、3年先となる2026年後半納期の竣工船でも希少価値が高まっていることから、26年後半納期の一部を戦略的に残している造船所もある。

日本の造船所の多くが主力製品とするバルカーの新造船市場は、今年前半のドライバルク市況の上昇を契機として「今年前半時点で日本の造船所の26年船台の大半が決まったような状況」(市場関係者)だった。今年半ば以降は造船所が3年以上先まで線表確定を進めたことや、ドライバルク市況の軟化もあり、新規商談は停滞感も強くなっている。

その一方で、国内外の有力船主の中には断続的に新造整備を進める動きもあり、「先物納期でも決まった案件もある」「まとまったロットでの発注で27年船台の多くが一気に埋まった」(国内造船所関係者)という状況もある。新造商談の停滞下でも新造交渉中の案件が固まり、線表確定が進んだ形で「船価は今後も上昇するとみていることの表れではないか」(造船所関係者)との意見もある。

日本の造船所ではこれまで手持ち工事の目安は2年〜2年半と言われてきたが、新造発注の回復や新燃料船の増加、インフレ、人手不足などを受けて、かつての目安よりもリードタイムを長めにとる造船所も多くなっている。自社の操業水準だけでなく、機器の調達納期も長くなっており、「手持ち工事は3年程度は持っていないと怖い」(国内造船所関係者)との指摘もある。

一方で、鋼材をはじめとした資機材価格上昇への警戒感や今後の船台不足の見通しから、27年納期を対象とした新造商談には慎重な姿勢をとる造船所もあり、戦略的に期近な26年納期の一部を残す造船所もある。造船所の戦略が分かれつつあり、線表確定の動向にも差がある。

海外造船所の動向をみても、26年納期の船台は希少となっている。中国船舶集団(CSSC)グループの上海外高橋造船や滬東中華造船、大連船舶重工、中国民営の揚子江船業グループや新時代造船といった大手造船所は、メガコンテナ船やLNG船、タンカー・プロダクト船などの船種で早い段階で商談を進めていたこともあり、今年の早い段階で26年船台を完売した。27年後半納期も続々と埋まってきている。

中国造船所の中で中型バルカーでの商談が目立ったのが、期近納期の船台に空きがあった国営の一部の造船所と、民営の中堅以下の造船所だ。こうした造船所でも期近納期を志向したギリシャ船主からのロット受注をはじめとした大量受注により、26年船台は残り少なくなっており、27年納期での受注も続々と顕在化している。

中国は日本や韓国と比べて鋼材価格が安価な水準で推移しており、「圧倒的に競争力のある船価を提示している」(国内造船所関係者)。こうした背景から線表確定は進められるだけ進めるという方針の造船所も多く、「中国造船所はその時々で最も良い条件で決められる案件をビジネスライクに決めている」(造船所関係者)という。

韓国造船所では、LNG船の建造ドックは、2027年納期が完売となり、最長で29年納期の成約が顕在化するなど、28年納期の成約も続々と決まっている。その一方で、スエズマックス以下の中型船型を建造する設備では26年前半納期での受注も表面化している。LNG船では先物まで受注を進める一方で、中型以下の船型では高値を更新をねらいながら、新規商談を進めている。
  • 海事プレスアプリ
  • ブランディング