2026年9月7日無料公開記事
地方港の生き残り策を模索
日本港湾経済学会、産官学で議論
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貨物量減少や航路不安定化、人手不足問題などに関して議論した
日本港湾経済学会は2~4日、広島県で第64回全国大会を開催した。3日の共通論題では「地方コンテナ港の課題とそれへの対応」をテーマとし、産官学の関係者で構成された中国地方国際物流戦略チームが共催。貨物量の減少や航路の不安定化、港湾労働者の不足など、地方港を取り巻く厳しい現状を確認した上で、産官学で解決策を模索した。
パネルディスカッションでは、岡山大学の津守貴之教授が座長となり、中国地方港運協会の金子隆義会長(シーゲートコーポレーション社長)、中谷庄吾副会長(中谷興運社長)、国土交通省中国地方整備局の林健太郎港湾空港部長、岐阜聖徳学園大学の長田元准教授、岐阜大学の鈴木力助教が登壇。(1)地方港の貨物量減少への対応、(2)海運市場の動向への対応、(3)人手不足問題への対応、(4)地方コンテナ港から考える今後の港湾政策のあり方をテーマに議論した。
地方港は背後立地企業の動向によって貨物量が大きく左右される傾向が強く、輸出入のインバランスが大きい港も多い。また全体的には輸入超過となり、空コンテナの輸出が増えている。津守氏は、「産業が空洞化し、貨物の絶対量も減っている。創貨や産業振興が急がれる」と言及。金子氏は、「安全保障の問題も高まっているが、税制優遇などを行うことで海外から地方への産業の国内回帰を進めることが、輸出貨物の創貨に効くのではないか」と述べた。
近年はアジア諸国と比べた相対的な貨物量と運賃の低迷により、日本発着のコンテナ船のスペース確保が難しくなっている。加えて、船舶の大型化やスケジュール順守率の低下も大きな課題となっている。中谷氏は、「本船スケジュールの変更に加え、地方港は週末や夜間に寄港するケースも多い。一方で、地方港の取扱量が減少傾向にある中、オペレーション面であまり自社の都合を言ってしまうと、船会社の評価が下がる。スケジュールの安定化や楽な時間帯での寄港をお願いしたいが、できる限り船社の要望に合わせて作業を提供し、早く本船を出港できるように取り組んでいく」と述べた。鈴木氏は、「地方港はコンテナ荷役と在来荷役の両方を担う場合が多く、こうした人材を時間をかけて育成し、長期定着をどのように図っていくかが課題となる。休日荷役や夜間荷役は現場に負担をかけることを船社など港湾利用者に理解してもらい、適正取引を進めていく必要がある」と説明した。
デジタル技術の活用に関して林氏は、「国は遠隔操作RTG・ガントリークレーンの補助制度を創設し、サイバーポートの利用推進も図っている」と説明。鈴木氏は、「遠隔操作化は、視力の低下や体力的に操作が難しくなった人も作業に従事できるようになるなど、門戸を開く意味で有効だ」と指摘。一方で中谷氏は、「地方港は取扱量が限定されるため、最新技術を導入する場合は費用対効果を考えなければならない」と述べた。水島港ではストラドルキャリア方式からRTG方式への変更を検討しているが、「導入コストを勘案すると、地方港で遠隔操作型を導入するのは困難だ。地方港では従来型RTGの方が有益な場合もあり、国には各港に合わせたオーダーメイド型の支援を検討してほしい」と要望した。
今後の港湾政策のあり方に関して長田氏は、「日本の全てのコンテナ貨物を1つの港湾に集約することは、現状のトラックや鉄道の状況を考えると事実上不可能だ。地域の港湾は必要となる」と強調した。金子氏は、「主要港は海外トランシップ貨物を誘致し、基幹航路の維持・拡大に向けて集中していくべきだが、地方港は(背後に立地する)顧客の利便性を第一に考える必要がある」と説明。中谷氏は、「仮に地方港が破綻すれば、日本全体の物流クライシスになる。地方港がしっかりオペレーションを行うことができる政策を期待するとともに、6大港には地方港にできないことを頑張ってほしい」と述べた。林氏は、国際コンテナ戦略港湾政策の重要性を強調するとともに、現在整備を進めている広島港の機能強化策を例に挙げ、「地域の基幹産業を支える港湾整備も重要だ。各港が背負っている国内産業・国民生活の価値を発展させる投資は、しっかり行う必要がある」と話した。