2026年2月16日無料公開記事

リスク緩和で補完的利用を提案
茨城県・山口港湾振興監に聞く

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山口隼人港湾振興監

 首都圏の物流を支える京浜港の補完・代替港として注目されている茨城港と鹿島港。近年は港湾機能の強化が進み、茨城港・常陸那珂港区では昨年、中央ふ頭で新たな耐震強化岸壁となるE岸壁の整備に着工した。2030年度に完成予定で、供用開始後は北ふ頭にコンテナ貨物、中央ふ頭に建機や自動車を集約し、それぞれの取り扱い機能を高める。さらに港湾背後の高規格道路の整備も進んでおり、アクセス性が向上する。ドライバー不足や自然災害の発生など物流が止まるリスクが懸念される中、茨城県内港の補完的な利用を荷主に提案していく。茨城県土木部の山口隼人港湾振興監に茨城県内港の現状と今後の方針を聞いた。

■E岸壁整備で機能強化を推進

 ― 茨城県内港(茨城港、鹿島港)のコンテナ取扱量は過去10年間で約2倍に増加した。足元の状況は。
 「茨城港・常陸那珂港区のコンテナ取扱量は23年・24年と2年連続で過去最高を更新し、昨年のコンテナ取扱量も堅調に推移した。24年にはSITCコンテナラインズの中国航路が新たに就航し、航路数も拡大している。一方、鹿島港のコンテナ取扱量は19年・20年に東京五輪・パラリンピックを見据えた物流シフトを背景として大きく伸びたが、その後は落ち着いていた。しかし昨年は、新規の利用者が増えたことで取扱量も伸びている状況だ。最近では京浜港のみならず、荷主拠点の近隣港を使いたいニーズが高まっており、茨城県内港も注目されていると実感している」
 ― 茨城港・常陸那珂港区では港湾機能の強化が進んでいる。昨年は中央ふ頭で新たな岸壁となるE岸壁の整備に着工した。
 「新たに整備するE岸壁は、従来の中央ふ頭地区C・D岸壁に隣接する水深14メートル・延長330メートルの耐震強化岸壁となり、30年度の完成を予定している。常陸那珂港区では現在、北ふ頭でコンテナ貨物や建機、中古車などを取り扱い、中央ふ頭のC・D岸壁で完成自動車などを取り扱っている。北ふ頭では、さまざまな貨物が混在する形となっているが、中央ふ頭のE岸壁の完成後は、北ふ頭で取り扱っている建機などを中央ふ頭に移転していく。最終的に北ふ頭はコンテナ専用のターミナルとして活用し、中央ふ頭は建機や自動車で活用していくことを目指す。これにより、北ふ頭ではより多くのコンテナ貨物を取り扱えるようになり、中央ふ頭で取り扱う建機や自動車にとっても利便性が高まる。滞船も解消し、港湾の運営効率も向上する」
 ― 有事の際の事業継続計画(BCP)の重要性が高まっている。茨城県内港では荷役機器の予防保全などを進めている。
 「仮に荷役機械が故障してしまうと抜港の原因になる。茨城港・常陸那珂港区では昨年1月までに、ガントリークレーン2基を入れ替えた。ヤード荷役で活用するRTGも発注を進めており、順次更新していく。鹿島港はガントリークレーン1基体制となるため、仮に故障した場合は影響が大きくなる。このため今年度から来年度にかけて、集中的に予防保全の取り組みを強化していく。事前に補修を進めることで突発的な故障を防ぎ、オペレーションを止めないような取り組みを進めていく」
 ― 茨城県内港の強みとして背後道路の充実が挙げられる。
 「東関東自動車道水戸線の潮来IC―鉾田IC間が26年度に全線開通する見込みとなっているほか、圏央道の久喜白岡JCT―大栄JCT間の4車線化事業も26年度までに全線開通する予定だ。鹿島港に接続する(仮称)鹿行南部道路の道路計画の基本方針が策定され、国においてその具体化に向けて検討が進められている。茨城県内のみならず、北関東エリアを含めて、港湾へのアクセスが向上することで、茨城県内港の利便性がさらに高まると期待している」

■物流分散化の選択肢に

 ― 今後のポートセールスの方針は。
 「荷主や物流事業者に対しては、有事のみならず平時においてもリスクに備えた選択肢の一つという観点から利用を呼び掛けている。近年は、ドライバー不足や、激甚化・頻発化する自然災害の発生など、物流が止まるリスクも懸念されている。持続可能な物流を構築するためにも、物流を分散化してリスク対応力を高めていくことが重要となる。リスクが顕在化した際に急に新たな港を使おうとしてもなかなかうまくいかない。このため、茨城県内港を平常時から少量の貨物でも利用することを荷主に提案している」
 ― 茨城県内港の利用を増やすためには、周辺の産業立地の促進も重要な要素となる。
 「茨城県は工場立地件数と県外企業立地件数が全国1位となっており、新しい産業も数多く進出している。高速道路や港湾といった物流インフラと、新規立地しやすい環境・制度が整っており、選択肢として魅力ある地域となる。ポートセールスにあたっては、茨城県の企業立地部門とも情報交換や連携を行っている。港湾周辺に立地する企業が茨城県内港を利用してもらえるように、一丸となって取り組んでいく」
 ― コンテナ貨物を集めていくため、荷主や船社に対するインセンティブ制度を設定している。
 「荷主や船社のニーズを聞きながら、状況変化に合わせた形で柔軟に制度設計していく。補助金を出すからには効果をしっかり上げていくことが求められる。現状は茨城港・鹿島港ともにコンテナ取扱量は堅調に推移しており、ニーズに合わせたインセンティブによってさらに増やしていけるよう取り組んでいく」
 ― 港湾における脱炭素化に向けた取り組みも進んでいる。
 「茨城県では23年に、茨城港と鹿島港について全国で初めて港湾脱炭素化推進計画を策定した。港湾での水素・アンモニアの受け入れに向けたフィージビリティスタディ(FS)も実施している。将来的には茨城県内港での受け入れ、後背圏へ供給していくことも検討していく」
 ― 茨城港では昨年7月、長期構想を策定した。
 「茨城港の現状や当港への要請を踏まえ、約20~30年後を見据えた将来像と各エリアのゾーニングを長期構想で示した。コンテナに関しては、荷主からニーズが高い東南アジア向け直航サービスや国際フィーダー航路の拡充に向け、茨城港の地理的特性を生かしたポートセールス活動に取り組んでいく。今後は長期構想をもとに、おおむね10~15年後を目標とした港湾計画の改訂を行っていく」
(聞き手:中村晃輔)
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