2025年12月16日無料公開記事港で輝く女性たち
《連載》港で輝く女性たち⑨
ガントリークレーンに憧れ、港の仕事へ
日本港運現業グループCYチーム・山本優芽実さん
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日本を代表する国際貿易港の1つである神戸港。同港の六甲アイランドコンテナターミナルで港湾荷役作業を手掛けるのが日本港運現業グループCYチームの山本優芽実さんだ。港でガントリークレーンを見かけて「乗ってみたい」という思いから一念発起して荷役作業員を目指した。ただ、その中では人員募集があっても「女性の就業環境が整備されていない、前例がない」といった理由で面接自体を断られた会社もあったという。現在入社5年目。一部ガントリークレーンを操作する仕事も任されるようになり「もっと操作技術を上げて、いろいろな仕事を任せてもらうことが目標だ」と意気込む。山本さんに仕事のやりがいなどを聞いた。
― 現在の業務内容は。
「トランスファークレーンやトレーラー、トップリフターなどの荷役機器を動かし、コンテナの積み下ろし作業などを行っています。また貨物の搬出入チェックなども手掛けています」
― 港で働き始めたきっかけは。
「現在入社5年目で、それ以前はトラックドライバーをしていました。前職でたまたま港の近くを通り、その際にガントリークレーンを見かけて「あれは何だろう。乗ってみたい」と思ったことが港で働き始めたきっかけです。それから、どこに行けばガントリークレーンに乗る仕事ができるかを調べ、日本港運に応募しました。ただ最初の面接時に荷役機器の操作には免許が必要だと聞き、まずは入社前にクレーンやフォークリフトなどの荷役機械の操作などを学ぶことができる『関西職業能力開発促進センター大阪港湾労働分所(ポリテクセンター大阪港)』に1年間通うことにしました。ポリテクセンター大阪港の学生は自分以外男性でしたが、一度決めたことはやり抜こうと思い、勉強しました。そこで全ての港湾荷役機器の免許を取得して再度当社に応募し、今の業務に就きました」
「実は当社以外にも港湾荷役作業員を募集している会社に応募していましたが、設備を含めて女性が働く環境が整備されていないことなどから『女性の作業員は募集していない』と面接前に断られてしまうこともありました。その点、当社は以前女性の作業員が在籍していた点も良かったのかもしれません」
― 仕事のやりがいは。
「特に夜間作業を無事に終えたときなどは達成感があります。また、最近は一部作業でガントリークレーンの操作を任せてもらえるようになりました。ガントリークレーンの操作練習は約2年前から始めました。それまでに他の荷役機器の操作を覚え、上長からの承諾を得て練習させてもらえるようになりました。空コンテナを掴む動きから少しずつ操作に慣れ、今では比較的大きな船の貨物を取り扱う夜間作業などを任せてもらえるようになりました。今後はさらに作業が難しい小型船も含め、昼夜問わずどの作業も任せてもらえるように一層技術を向上させたいと思います」
― 港で働いて大変だったことは。
「まず女性作業員がいなかった点は少し不安でした。また、現場に慣れてもトイレに行きたいときに言い出しづらいことなどもありました。夜中の作業も慣れるまで苦労しました」
「一方で設備面では、元々事務職で女性社員がいることもあり、事務所には女性用のトイレも更衣室もありました。ただ、夜間作業後の仮眠場所は女子更衣室内にベッドを設置して、新しく用意してもらいました」
― 女性が長く働くために必要だと思うことは。
「子育てと仕事を両立できる環境は重要なのではないでしょうか。この仕事は夜間作業もあり、私ならば周りに迷惑をかけてしまうのではないかと考えてしまいます。育休をしっかり取得できる環境があることや、また夜間などの不規則な業務も家族に理解してもらうことが必要だと思います」
― 港で働く女性を増やすには。
「このような仕事があることを知ってもらうことが大切だと思います。最近、港湾短大神戸校に何人か女性が入学したと聞きました。その人たちはテレビでこの仕事を知ったことが入学のきっかけになったと話しており、もっと港の仕事の認知度が上がれば女性でも絶対に興味を持つ人は出てくると思います」
「また、既に港で働いている女性がいたらもっと働いてみようと思う女性が増えると思います。私が入社したときに女性の作業員はいませんでしたが、事務職として同じ事務所内で働いている女性がいたのは心強かったです。また最近は、同じターミナルの港湾荷役作業員で女性が入ってきました。その人とは会社は異なりますが、同じ現場に女性が入ってきたことは私も嬉しかったですし、彼女からも『先に女性で働いている女性がいたので安心した』と言われました」
― 港湾の現場で活躍するために必要なことは。
「港の仕事はコミュニケーションが重要です。トラックドライバーのときはどちらかと言えば個人個人で動くことが多かったのですが、港湾の仕事は同じ現場で決まったメンバーが働いています。積極的にコミュニケーションを取り、自分の意見をしっかり伝えることが大切だと思っています」
(聞き手:山﨑もも香、取材協力:日本港運協会)