2025年6月25日無料公開記事港で輝く女性たち
《連載》港で輝く女性たち⑥
検数員で活躍、家族の反応も変化
全日検九州支部現業部博多事務所・山野井咲那さん
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山野井咲那さん
九州エリアの中心港湾として重要な役割を担う博多港。同港で検数員として活躍するのが全日検九州支部現業部博多事務所の山野井咲那さんだ。夏は暑く、冬は寒い現場で奮闘し、任される仕事も増えていく中で、当初は港で働くことを心配していた家族からの反応にも変化があったという。港で働き始めたきっかけや現在の業務に対する思いを聞いた。
― 現在の業務と港で働き始めたきっかけは。
「博多港で自動車専用船シップサイドの検数業務とモータープールでの自動車の入出庫受付業務に就いています。この仕事を知ったのはハローワーク主催の就職面談会です。私は小学校から高校までバレーボールを続けていたこともあり、体を動かすことが得意でした。そのためずっと座りっぱなしの仕事よりも、動きながら働くことができる現場の業務が合っていると考えました」
「就職面接では既に女性職員2人が働いていると聞き、安心感がありました。今後港で働く女性を増やす方法としても、会社紹介のパンフレットに女性職員を登場させるなどして女性も現場で活躍していると知ってもらうのは良いかもしれません」
「また父がドレージのドライバーをしているため、港湾の仕事について話を聞く機会もありました。ただ、どちらかと言えば当初は港湾で働くことについては、事故などの危険もあるのではないかと心配されていましたね」
― 入職後に苦労したことは。
「入職後おおむね1カ月はマンツーマンで自動車専用船担当の女性職員2人から仕事を教わり、その後自分一人で業務を手掛けるようになりました。最初に大変だったのは、自動車の車種を覚えることです。元々私は自動車にあまり詳しくなかったので、すごく苦戦しました。休憩時間中もずっとスマートフォンで自動車の車種を調べて、特徴をつかみながら覚えるように努力しました」
― 仕事のやりがいは。
「日本は海外との交易が必要不可欠です。私も検数員として日々、輸出入業務に携わることができてやりがいを感じています。特に現在は自動車専用船の主席検数業務を任されています。1つもミスなく出航させることができたときには達成感を感じます」
― 男性が多い職場で働くことの苦労はあったか。
「コミュニケーションの部分で苦労した部分はありません。当社内も協力会社の人たちとも、男女関係なくコミュニケーションが取れています」
「ただトイレ設備は改善してもらいたい部分もあります。現場によっては女性用のトイレがない場所もあります。当社では、女性職員は女性用トイレがある現場の担当にしてもらえますが、いろいろな現場を経験したくても設備面の問題で行くことができる現場が限定されてしまいます。また生理の時などにすぐに現場を離れることができないことも女性にとっては不安だと思います」
― 働き方や制度面はどうか。
「会社もなるべく女性は遅くまで残らないで良いようにシフトを組んでいます。自動車専用船の検数業務は基本的に朝から開始して夕方には終わります。現場によりますが、私も遅くても午後8時までには退社しています」
「また、制度面もしっかりとしており、育児休暇も取りやすいと思います」
― この仕事に向いている人は。
「まずは仕事に対してやる気があることが大事ですが、相手が男性だからあまり自分の意見を言えなかったり、ため込んでしまったりする人は続かないと思います。疑問に思ったことをすぐに人に質問できることが大事です。また、現場の仕事は夏は暑く、冬は寒いのである程度体力に自信がある人が向いていると思います。私は子どものころから長くバレーボールに打ち込んできたので体力には自信がありましたが、屋外での作業にあまり慣れていませんでした。そのためか、入社直後に熱中症になってしまったことがありました。今は屋外での作業では体調を崩さないように注意していますが、それでも夏は冷たいものを首に充てたり、冬はとにかく着込んだりして対策するしかないですね」
― 仕事を続ける中で家族の反応は。
「当初は港で働くことを心配していた父の反応も変わってきましたね。現場で熱中症になってしまったときは、とても心配されましましたが、自動車専用船で主席業務を任されたと伝えたときは、男性だけでなく女性も必要とされている会社なのだと分かってもらえました。今では、仕事のことで褒められることもあり、応援してくれています」
(聞き手:山﨑もも香、取材協力:日本港運協会)
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本連載では今回から日本港運協会とのタイアップにより、港湾運送業界で活躍する女性を取り上げていきます。