2026年9月9日無料公開記事

資産拡大の次は収益力・資本効率向上
商船三井グループのダイビル・鍬田社長に聞く

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 商船三井グループで不動産事業を手掛けるダイビル(大阪市北区)。海運業のボラティリティを補完する安定収益源としての役割を担い、商船三井グループの重点投資方針の下、総資産を過去3年間でほぼ倍増させた。4月1日付で就任した鍬田博文社長(写真)は本紙インタビューで「アセットの量の拡大に続いて、収益力と資本効率の向上に取り組む」と語り、従来からの不動産賃貸事業をコア事業として維持・強化しながら、新たにキャピタルゲイン型の不動産投資とアセットマネジメント事業の育成にも取り組み、海外事業もさらに拡大していく方針を示した。
 ― 社長就任の抱負と重点課題は。
 「商船三井グループの経営計画『BLUE ACTION 2035』フェーズ2では、事業を市況享受型、ハイブリッド型、安定収益型に分類しているが、その中でもダイビルの不動産事業は特に安定した事業という位置付けだ。フェーズ2に合わせる形で、ダイビルも5カ年の新中長期経営計画『BUILD NEXT』フェーズ2を今年度から開始した。フェーズ1の3年間で当社の総資産は4000億円強から8000億円台へとほぼ倍増した。ただ、不動産は支出が先行する事業だ。また、ダイビルのコアビジネスである不動産賃貸事業は、海運市況の変動を補完する安定収益事業として商船三井グループの中で重要な役割を担っている。一方で、ダイビル自身の成長と商船三井グループの成長により一層貢献していくためには、安定収益の確保に加え、さらなる収益力や資本効率の向上にも取り組む必要がある。商船三井に対する株式市場からの期待も踏まえ、アセットの量的拡大に続き、収益力と資本効率の向上を通じた企業価値の向上に取り組む」
 「ダイビルが100年にわたり培ってきた、好立地に良いビルを建て、良いテナントに長く入居していただく不動産賃貸事業は当社の最大の強みであり、第1の柱として今後もさらに磨き上げていく。これに加え、2本目の柱としてキャピタルゲイン型の不動産投資を国内外で増やしていく。3~5年程度の期間で投資し、売却してリターンを得るものだ。そのために『ダイビルキャピタル』を子会社として設立して実行に移している。3本目の柱がアセットマネジメント事業。不動産を流動化・証券化して投資家からの資金を活用して、不動産を運用し、資本効率を上げて運用手数料や成功報酬を稼いでいくビジネスで、金融商品取引法上の登録を行って子会社をもう1つ作って参入する予定だ」
 「この3つの柱を中心として事業展開する中で、海外事業も引き続き伸ばしていく。また、インフレや金利上昇やオフィスの空室率なども踏まえ、テナント殿のご理解を得ながら賃料改定にも積極的に取り組む。一方、ダイビルの強みの1つは、ビルの管理や清掃などのプロパティマネジメント、ビルメンテナンスをグループ内で行っていることで、物件を流動化して仮に部分的な保有になったとしてもダイビル品質を維持して管理・運営に関わり続けたい」
 「ダイビルは単にビルを造って貸して終わりのビジネスモデルではなく、テナント殿と直接密な関係を築いてきた。そのようにしてダイビルが100年以上かけて培ってきた価値は決して失われるものではなく、貴重な財産として持ち続けたい。当社で働く誇りや喜びや“ダイビルらしさ”も経営者として大切にしていきたい。私自身は不動産業界での経験は長くないが、専門性を持つ社員みんなの知見を尊重しながら、ダイビルの企業価値を上げることに集中したい。そのために何が必要なのかを、オープンかつフラットにみんなで話していきたい」
 ― アセットマネジメント事業の開始時期は。
 「『BUILD NEXT』の当初計画を1年前倒しし、2027年度に第1号ファンドを立ち上げて事業を開始する。まず当社の既存ビルを流動化し、将来的には外部のビルも対象にしていきたい。アセットマネジメント事業は運用資産残高や案件規模を積み上げていかなければ収益化が難しい事業だが、自社ビルから始め、フェーズ2期間中には黒字化まで持っていきたい。ノウハウを蓄積し、次のフェーズ以降で成長軌道に乗せていきたい」
 ― アセットマネジメント事業の対象は。
 「オフィスビルに加え、倉庫などの物流不動産も想定しており、商船三井グループが持つグローバルな物流、港湾・ターミナル、エネルギーなど幅広い事業との連携可能性があり、グループの総合力を生かしたユニークな不動産事業の展開を目指したい。プロジェクトの前段階で出資し、価値が高まった段階で売却することもあるし、完成直前や完成後に投資家へ売却することもある。基本的には、なるべく早く回転させ、1件当たりの出資額もなるべく小さくして多くの案件を手掛けたい。ただ、プロジェクトの早い段階での出資にはさまざまなリスクがあるため、適切なリスク管理体制を構築しながら取り組んでいく」
 ― 海外不動産事業の現状と今後の目標は。
 「最初に進出したベトナムが3件で、インドが2件、オーストラリアが3件、英国が2件ある。収益性の高い海外不動産をさらに拡大したいが、当面はこの4カ国を重点地域と位置付け、案件の積み上げと事業基盤の強化を進める方針だ。オフィスビルが中心だが、物流不動産についても商船三井と連携しながら取り組みたい」
 ― 国内不動産事業の投資方針は。
 「大型オフィスビルへの投資は一段落している。現在建設中の札幌ダイビルは来年4月末に竣工し、夏ごろにグランドオープンする予定だ。現在解体中のANAクラウンプラザホテル大阪の跡地は再開発を検討しており、大規模なプロジェクトになる見通し。また、商船三井本社が入っている虎ノ門ダイビルの建て替えについても、今後のメンテナンス計画を考えると、2~3年のうちにある程度方向性を決めなければならない。新宿ダイビル(旧新宿アルタ)も含め、国内不動産は基本的に建て替えや再開発案件が中心となる。保有資産の価値向上を通じて、収益力を強化していきたい」
 ― 事業の拡大に当たっては人材が重要だ。
 「事業拡大も見据え、ダイビル本体の社員数は5年前の約90人から現在の約130人に増えた。これから新しいことに取り組んでいくためにはさらに人材が必要で、採用を新卒とキャリアの両方で増やしている。海外事業やアセットマネジメント事業を担う専門人材も必要であり、採用・育成を強化するとともに、商船三井グループの人材も活用していきたい」
(聞き手:深澤義仁)

【くわた・ひろふみ】1986年(昭和61年)京都大学法学部卒業、山下新日本汽船(現商船三井)入社。石炭船部長などを経て、2017年執行役員、20年常務執行役員、23年専務執行役員、24年副社長執行役員チーフ・オペレーティング・オフィサー。26年4月から現職。1962年(昭和37年)5月生まれ、熊本県出身。
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