2025年6月18日無料公開記事シップリサイクル

《連載》シップリサイクル⑥
バーゼル条約・EU規制との関係で課題残る
シップリサイクル条約の発効後も

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6月26日に発効するシップリサイクル条約だが、発効後もなお課題として残るのが船舶の解撤に関する欧州規則(EU-SRR)との整合性や、バーゼル条約との関係性の整理だ。シップリサイクル条約の実効性確保に向けては、解撤ヤードにより厳しい設備要件を課すEU-SRRと、有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル条約との課題解消が肝となる。

EU(欧州連合)はシップリサイクル条約に先行して、2018年12月31日からEU籍の新造船に対しシップリサイクルの地域規制をスタートした。20年12月31日からはEU籍現存船とEU加盟国に寄港・停泊する非EU籍船に対してインベントリ(IHM)の船内への備え置きを義務付けた。IHMについてはシップリサイクル条約とほぼ変わらない内容となっているが、大きく異なるのが解撤ヤードに対する施設要件だ。

日本船主協会解撤幹事会の岩佐久美子幹事長は「EU-SRRはシップリサイクル条約よりも厳しい施設要件を課しており、大型重機の導入や廃棄物処理施設の設置、医療設備の充実など設備投資へのハードルが高く、年単位で整備に時間を要する」と語る。

EU-SRRでは砂地や潮間帯にブロックを置くことを禁止するなど、ビーチング方式では承認を得ることが難しい。インドなどの一部ヤードではシップリサイクル条約の基準を満たしたうえで、さらにEU-SRRでの承認を得るため、設備の改善を進めている。「改善への姿勢は否定できないものだが、EU-SRRがスタンダードとなってしまうことを懸念している」(岩佐幹事長)。日本船主協会海務部の山上寛之副部長は「シップリサイクル条約に向けヤードの改善を進めているバングラデシュやパキスタンにとっては(EU-SRRの基準は)負担が大きいものだ。当協会は船主の立場から、シップリサイクル条約のレベルでの整備をまずは進めていくよう解撤ヤードに呼びかけている」と述べる。

バーゼル条約との二重適用問題の課題も残る。有害廃棄物の越境移動、処理は1992年に発効したバーゼル条約がすでに国際的枠組みで規制を設けていた。一方で船舶特有の旗国の概念や、解撤船は自走して越境移動することなどから、船舶へのバーゼル条約の適用が難しいことが指摘されていた。このような背景も含め、シップリサイクル条約で船舶の解撤の国際的枠組みが定められたが、バーゼル条約とシップリサイクル条約の整合性については結論が出ておらず、解撤のための船舶の越境移動について両条約が二重で適用される可能性がある。

国際海事機関(IMO)の第82回海洋環境保護委員会(MEPC 82)ではシップリサイクル条約とバーゼル条約の実施にかかる暫定ガイダンスが作成され、バーゼル条約事務局とともに議論を進めることが決まった。先月行われたバーゼル条約第17回締約国会議では事務局長から同ガイダンスが紹介され、来年行われるバーゼル条約のワーキンググループ内で本格的な議論が進められる見込みだ。
(連載おわり。春日映莉子、日下部佳子、深澤義仁が担当しました)

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