2026年8月13日無料公開記事
EV火災・新燃料への対応強化
カシワテック、坂井技術本部長に聞く
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坂井技術本部長
電気自動車(EV)の海上輸送拡大やアンモニアなど新燃料船の普及を背景に、船舶を取り巻く火災・防災リスクは大きく変化している。船舶用消火・防災設備メーカーのカシワテックは、高膨張泡消火装置やアンモニア関連技術の開発、実証試験、アフターサービスを通じ、新たな安全課題への対応を進める。変化するニーズをどう捉え、どのような技術で応えていくのか。坂井重郎常務取締役技術本部長に聞いた。
― EV火災への対応をどう見ているか。
「リチウムイオン電池を搭載したEVが増え、自動車運搬船の火災対策は業界全体の大きなテーマになっている。当社では約3年前、船会社立ち会いの下で実際のEVを使った消火実験を行い、高膨張泡消火装置で対応できることを確認した。実験結果を公開したことで、自動車メーカーから問い合わせがあり、設備導入につながった事例もある。現在は国際海事機関(IMO)でもEV火災への対応が議論される中、日本建造の自動車運搬船向けには当社の泡消火装置が広く採用されている。中国や韓国で建造される船でも採用され始めており、自動車運搬船の新たなスタンダードになっていけばと考えている」
― アンモニアなど新燃料への対応は。
「アンモニア分野では、不活性ガス発生装置(IGG)で培った燃焼技術を応用し、アンモニア専焼バーナー『NEXAMO(ネクサモ)』の開発を進めている。当初はアンモニア燃料船向けを想定していたが、アンモニア燃料船の普及には時間がかかるため、従来からIGG用バーナーで協力関係にあったサンフレムと共同開発を進めながら、船舶だけでなく陸上用途も含めた製品化を目指している。展示会への出展も重ね、用途開拓を進めている」
「アンモニア漏えい時に噴霧状の水で除害する『アンモニア用放水モニター』の開発にも取り組んでいる。船舶だけでなく、陸上施設での活用も見据えている。アンモニア利用に関する規則は整備が進んでいるものの、どの程度の散水が必要かなど十分なデータが蓄積されていない部分もある。試験を重ねながら技術的知見を蓄積し、安全なアンモニア利用に貢献していきたい。近年は、二元燃料船向け窒素ガス発生装置など、脱炭素化や燃料の多様化に対応した製品の需要も拡大している」
― こうした新たな課題への対応で、技術センターはどのような役割を担っているか。
「茨城県坂東市の技術センターでは、大型放水試験や消火試験、不活性ガス試験などを実機に近い環境で実施している。自動車運搬船の車両艙を模した架台における複数台車両の消火・抑制試験やアンモニアバーナーの試験もここで行ってきた。最近では社外への試験設備の貸し出しも進めており、場所だけでなく試験器具そのものを製作するケースもある。実際の試験を見てもらうことが、製品への理解や信頼、新たな用途開拓にもつながっている」
― アフターサービスにも力を入れている。
「防災設備は火災時に確実に作動しなければ意味がない。泡消火装置は二酸化炭素(CO2)消火装置に比べ構造が複雑で、ポンプやバルブなど多くの機器で構成される。そのため信頼性を高めるには保守が欠かせない。2024年にはアフターサービス部を新設し、問い合わせ対応だけでなく点検や更新を能動的に提案する体制へ切り替えた。また、顧客向けの専用Webサイトも開設し、点検や保守に関する情報提供の充実を図っている。将来的には設備状態の監視や点検データの活用にも取り組み、予防保全につなげていきたい」
― 今後の開発方針は。
「世の中がどう変わるかを予測することは難しい。しかし、顧客から『こんなものは作れないか』と相談されたら、まず全力で応える。その積み重ねがEV火災対策やアンモニア関連技術につながってきた。同じ製品を売り続けるだけでは競争力は維持できない。今後も新しい技術や素材を積極的に取り入れ、変化する時代のニーズに応える製品を開発していきたい」
(聞き手:岡部ソフィ満有子)