2025年11月4日無料公開記事
自動運航・運航支援の技術開発を紹介
日本無線、損保ジャパン主催のセミナーで
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日本無線は10月29日に開催された損害保険ジャパン主催のウェブセミナーで、同社が進める自動運航技術や運航支援技術の開発動向について講演した。衝突の危険性が高い領域をレーダー上に表示し衝突リスクを可視化する機能や、操船者の負担が大きいタスクを自動化する機能を紹介したほか、日本財団の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」での取り組みにも触れた。
日本無線マリンシステム事業部企画推進部戦略推進グループの樋口穣司氏が登壇し、「自動運航船/航海支援に関するJRCの取り組み」をテーマに講演した。自動運航に向けた同社の取り組みとして、2018年に策定したロードマップを示し、これまで船陸間の情報共有の仕組みづくりなどを進めてきたと説明。並行してMEGURI2040にも参画し、DFFASコンソーシアムでは陸上支援センターの設計開発を担ったとした。現状は無人運航の運用開始には至っていないが、無人を見据えた運航を支援するための省力化や支援機能の開発を第一段階として進めていると述べた。 その一環で開発した製品も紹介。衝突の危険性が高い領域をレーダー画面に表示する衝突危険領域表示機能「Safety Zone Viewer(セーフティゾーンビューアー、SZV)」は、衝突危険領域を可視化し、安全な避航判断を支援するもので、OZT(Obstacle Zone by Targets)アルゴリズムを利用しており、同社レーダーJMR-9200/7200シリーズへのライセンス追加のみで利用可能とした。
現在開発中の避航ルートを操船者に提案する機能「Path Planner(パスプランナー)」は、操船タスクのうち、特に操船者の負担が大きい各種センサー情報の統合、リスク分析、避航計画策定の部分を自動化する装置だと説明。これに加え、例えばオートパイロットやスピードパイロットを接続することで、自動操舵や自動船速制御も可能になるとした。MEGURI2040の中で開発を進めており、プロジェクト終了後の製品化を目指し取り組む方針を示した。
MEGURI2040の第2ステージでは川崎汽船、YDKテクノロジーズとのワーキンググループで自動運航システムの開発に取り組んでいると説明。川崎近海汽船が運航するRORO船“第二ほくれん丸”で2年前に実施した、Path Plannerを用いた実証試験にも触れ、設定海域で、システム稼働率平均約96%を達成したことも紹介した。セミナーでは実証で得たデータをシミュレーションで再現した動画を提示し、当時の運用像を具体例として紹介した。
自動運航の実現に向けた課題としては、情報収集から実行に至る一連のタスクを機械が担う前提において、機械が分析するリスクの妥当性、そこから出力される計画への信頼をどう確立するかを挙げ、機械による支援を強めながらアウトプットの信頼性を証明していくことが自動化へのプロセスになるとの考えを示した。
その後、損保ジャパンの担当者が、自動運航船と在来船との衝突に関する課題を解説した。