2025年10月31日無料公開記事新燃料船建造の現状分析
《連載》新燃料船建造の現状分析①
バルカーやタンカーは新造整備停滞
中国造船が新燃料船でも多大なシェア
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コンテナ船や自動車船、LPG船は代替燃料化進む(写真=ブルームバーグ)
国際海事機関(IMO)で温室効果ガス(GHG)の規制枠組みの採択の結果次第で、新造整備の進展への期待もあった新燃料船。これまでの新燃料船の新造整備状況をみると、既存船で3%未満、発注残に占める割合でも3割未満にとどまっており、特にボリュームゾーンのバルカーでは新燃料船の新造整備が進んでいない。IMOでの採択延期を受けて、LNG燃料をはじめとした新燃料船の新造整備が停滞するとの見方も出てきているなか、これまでの新燃料船の発注動向や、造船所の取り組み、シェア、課題など新燃料船建造の現状を改めて整理・分析する。
「二元燃料船の建造実績はあるが、自動車船やコンテナ船を除けば、ケープサイズやVLCCなど船型を問わず引き合いの中心は重油焚きだ」(国内造船所営業担当役員)。LNG燃料をはじめとした代替燃料船の発注・建造は、船種によって進捗状況に差が現れている。
日本海事協会(NK)が公表している「Class NK代替燃料インサイト」(Version3.1、2025年6月末時点)の概要を引用すると、全世界の代替燃料船は建造実績が869隻(5000総トン以上、LNG運搬船除く)で、既存船全体に占める割合がわずか2.2%。代替燃料船の発注残が1187隻で、発注残全体に占める割合でも23.3%にとどまっている。自動車船、LPG船、コンテナ船以外の船種では代替燃料船の採用は依然として進んでいない。
(出典:Class NK代替燃料インサイト)
同インサイトによると、船種別の代替燃料船の比率は、最も低いバルカーが既存船0.4%・発注残8.0%、比率が高い自動車船やコンテナ船、LPG船で既存船3.5~15.2%・発注残56.7~84.5%となっている。
代替燃料船の隻数の内訳は、既存船ベースでバルカー64隻(LNG63隻、メタノール1隻)、コンテナ船224隻(LNG193隻、メタノール31隻)、原油タンカー60隻(いずれもLNG)、プロダクト船111隻(LNG83隻、メタノール28隻)、LPG船(LNG10隻、LPG141隻)、自動車船98隻(いずれもLNG)。発注残ベースでバルカー110隻(LNG32隻、メタノール60隻、アンモニア18隻)、コンテナ船521隻(LNG345隻、メタノール173隻、アンモニア1隻、水素2隻)、原油タンカー50隻(LNG37隻、メタノール10隻、LPG3隻)、プロダクト船64隻(LNG44隻、メタノール18隻、アンモニア2隻)、LPG船161隻(LPG143隻、アンモニア18隻)、自動車船153隻(LNG128隻、メタノール25隻)。代替燃料船の中心は引き続きLNG燃料船となる見込みだ。また、LNG船は発注残ベースで100%、既存船ベースで93.4%と、ほぼ全船がLNG焚きとなっている。
(Class NK代替燃料インサイト)
ベッセルズ・バリューのデータを基に集計(一部除外)した主要船種の造船国別の代替燃料船のシェア(建造実績に発注残を含めたもの)は表のとおり。ここ数年の新造船の受注・建造シェアと同様に、代替燃料船でも中国造船所が多くの船種で圧倒的なシェアとなっている。
日本や韓国造船所はLNG燃料仕様として1番船を建造した船種もあったが、建造隻数ベースのシェアでは、中国造船所が建造キャパシティや価格面を背景としてLNG燃料船で受注攻勢をかけた格好だ。特に自動車船やコンテナ船といったLNG燃料化が進んだ船種で新規参入など重点的に受注を進めており、主力とする船種によってもシェアに影響が出た。中国造船所は建造隻数の増加に伴って、LNG燃料タンクをはじめとしたLNG関連の製造企業が育成され、「価格面での差も広がった」(国内造船所幹部)との指摘もある。
IMOでの規制枠組みの採択は延期されたが、造船所は新燃料船や関連技術の開発・対応を従来通り進める方針で、新燃料船の技術開発を今後どのように進めていくかも課題となっている。
代替燃料船の開発動向も各国で傾向が分かれている。中国はCSSCの船舶設計会社、上海船舶設計研究院(SDARI)が開発したデザインを中心に民営を含めた造船所に展開。韓国は大手3社を中心とした独自開発路線をとっている。日本は各社の独自開発路線で進めていたが、アライアンスの検討や造船エンジニアリング会社の活用も進んでいる。代替燃料は従来燃料油よりも発熱量が低く、より大きな燃料タンク容量を必要となり、航路やニーズに応じて検討が必要になり、ガスに関するノウハウも求められるため、エンジニアリング会社が担う役割も大きくなっている。
(この連載は、松井弘樹が担当します)