1. ニュース

2025年10月23日無料公開記事日本舶用の海外拠点

《シリーズ》日本舶用の海外拠点<シンガポール>
プロペラ換装相談が増加
ナカシマ・アジア・パシフィック、ベッカーと協業進展

  • X
  • facebook
  • LINE
  • LinkedIn

(右から)井上氏、森岡氏

 ナカシマプロペラは2011年、シンガポールの営業拠点としてNAKASHIMA ASIA PACIFIC PTE.LTD.(ナカシマ・アジア・パシフィック、NAPAC)を設立した。現在は、2021年にナカシマプロペラグループに加わった舵大手の独ベッカーマリンシステムズのシンガポールメンバーとオフィスを共有している。両社の連携により、プロペラと舵、省エネ付加物を組み合わせた一体型パッケージ提案が可能となった。
 NAPACの現在のメンバーは、日本人駐在員1人を含む7人。ナカシマプロペラの中島崇喜社長が現地法人の社長も兼任する。カバーエリアは、現地工場を置くベトナム、フィリピンを除くASEAN地域と、オセアニア、中東だ。
 主な業務は、各地域のニーズに特化したプロペラやレトロフィットの提案。小型サイズのプロペラに関しては、シンガポールが日本を除く全世界の受注窓口を担い、サイズに応じてフィリピンやベトナムの工場に製造を振り分けている。さらに、アフターサービスの窓口機能も持つ。
 井上雅也前ゼネラルマネージャーによると、「シンガポールでは、新造船が少ない分、外航オーナー向けのレトロフィット提案が主力業務になっている」。新造外航船向けの大形プロペラが好調であると同時に、国際海事機関(IMO)の燃費実績格付け制度(CII)など環境対策需要も高まっており、NAPACでは既存プロペラから新設計プロペラへの換装で効率を高める提案への問い合わせが増えている。
 さらに、ベッカーマリンシステムズとの協業によって、提案の幅は広がった。ベッカーマリンは、船尾に搭載する省エネダクト「Becker Mewis Duct」で知られるが、省エネダクトを導入すると水流が変化するため、プロペラの再設計や改造が必要となるケースが多い。こうした中、両社がオフィスを共にし、細かい技術データを含む情報を共有することで、舵・省エネ付加物・プロペラを組み合わせた包括的な省エネパッケージを提供できるようになった。
 また、小形プロペラではインドネシア・マレーシアでのタグボートの建造がブームで、同地区の売上がコロナ以降急激に増えてきている。
 ベッカーマリンシステムズのシンガポールチームは、技師や営業、経理のメンバー体制で、NAPACと同じオープンフロアに机を並べている。両社が日常的に情報交換しやすい環境が整っており、グループ内でオフィスをシェアするのは、NAPACが唯一の事例だ。
 ナカシマプロペラは近年、ベッカーマリンシステムズをはじめ、同社が掲げる「推進性能の最適化」に資する企業の買収や協業を進めている。今年に入ってからは、インドネシア現地企業と共同で舶用推進機器の販売・修理を行う合弁会社を設立したほか、米国ミシガンホイール・ホールディングスの欧州事業を買収した。こうした動きに伴い、組織体制の再編も進めており、井上氏は独ハンブルクのベッカーマリンシステムズ事務所に出向した。
 今後の展望について、森岡貴志ゼネラルマネージャーは「東南アジアや中東など若く活気ある市場のポテンシャルは非常に大きい。ナカシマグループとして、これらの市場での事業拡大に、今まさに取り組むべきタイミングだと考えている」と語った。

関連記事

  • 増刊号シンガポール2025
  • ブランディング