2025年10月3日無料公開記事日本舶用の海外拠点
《シリーズ》日本舶用の海外拠点<シンガポール>
25年は過去最高の売上が視野に
アルファトロン・マリンシステムズ、サービス強化が奏功
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日本無線(JRC)のシンガポール拠点、Alphatron Marine Systems Pte Ltd(アルファトロン・マリンシステムズ)は、同国を拠点に東南アジアやオセアニア、中東市場向けの舶用電子機器の販売・サービス拠点として機能している。近年はサービス事業の強化に注力しており、2025年は過去最高の売上の達成を視野に入れる。
JRCは2013年、海上機器のシステムインテグレートを手掛けるオランダのアルファトロン・マリンを連結子会社化(16年に完全子会社化)。それに伴い、アルファトロン・マリンのシンガポール法人であるアルファトロン・マリンシステムズと、JRCのシンガポール営業所を2014年に統合し、アフターサービスの質の向上に向けて体制を再構築。現地市場での競争力を高めてきた。
現在、同拠点の従業員は一体運営するマレーシア法人を合わせて約120人、日本人駐在員として、アルファトロン・マリンシステムズの矢島亮CEOがシンガポール、マレーシアの両拠点を統括する。 主要業務は、シンガポールと周辺国向けのダイレクトセールスとアフターサービスで、JRC製の舶用電子機器に加え、アルファトロンブランドの製品も取り扱い、幅広い顧客ニーズに対応する。また、機器やスペアパーツの在庫も確保し、顧客の要望には365日体制で対応している。
矢島CEOによれば、過去3年間はサービス強化を最優先課題として取り組んできた。コロナ禍によるサプライチェーンの混乱や部品不足の影響が続く中、顧客への対応を維持するため、技師やサービスコーディネーターを増員。現在は自前の技師、サービスコーディネーターともに各20人以上、さらに協力会社の技師も含めてチームを編成し、定期的な技術トレーニングやスキルチェックを実施している。
人員の増強に加え、顧客への問い合わせには迅速に対応し、テクニカルサポートも充実させ、タイムリーなアドバイスを提供する体制を徹底。矢島CEOは「とにかくサービス体制を強化してきたことが、顧客の信頼獲得につながり、結果的に数字にも表れている」と述べる。こうした取り組みの成果として、サービス事業の売上は2023年以降倍増し、24年も拡大を継続。好調なサービス事業が追い風となり、25年上半期には過去最高の売上を達成しているという。
サービス拠点としての役割は年々拡大しており、近年は大手船主やオフショア船事業者への直接営業・技術支援も増加している。特にUAE、インド、香港などの顧客へのシンガポールからのサービス提供は利便性が高く、現地での評判向上に寄与している。
拠点の体制面でも改善を進めている。現オフィスは駅からやや距離があるため、従業員はマイクロバスで通勤しているが、来年には同じトゥアス地域内で駅から徒歩圏内の新オフィスに移転予定。増員に伴い、より広いスペースを確保する。新拠点ではトレーニング用ルームもさらに充実させ、技師や代理店向けの研修をより効率的に実施できる環境にする。
今後の課題としては、人件費や家賃の高騰を踏まえたオフィス運営の最適化が挙げられる。新オフィスへの移転とマレーシア事務所との連携強化を通じ、効率的な運営体制を確立する計画だ。