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2025年5月19日無料公開記事

無漏洩ポンプを舶用展開へ
帝国電機製作所、新燃料向けで需要獲得狙う

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キャンドモーターポンプのカットモデル

 産業用ポンプを手掛ける帝国電機製作所(本社=兵庫県たつの市、村田潔社長)は、船舶向けの展開強化を狙っている。アンモニアをはじめとする新燃料への移行に伴い、ポンプに対してこれまで以上に安全性や密閉性が求められる中、“漏れない”構造を持つ主力製品「キャンドモーターポンプ」の舶用展開に注力する。既に国内の次世代燃料船プロジェクト向けで受注実績があり、脱炭素化の流れを新たな市場拡大の契機と捉えている。
 同社の主力製品であるキャンドモーターポンプは、モーターとポンプが一体化し、取り扱う液体を外部に漏らさずに安全に移送できる構造を持ったポンプ。その名称は、「缶詰め(CAN)」のように中身を完全に密閉する構造に由来する。この密閉構造により、爆発性・引火性・毒性を持つ液体や、強酸・強アルカリといった危険な薬品の取り扱いに適しており、高温・高圧の環境でも高い信頼性を発揮する。
 同社製ポンプには、内部のベアリング摩耗状態をリアルタイムで表示する機能が標準装備されており、運転中も分解せず常時監視が可能。損傷前の点検・補修により、トラブルの予防に貢献する。営業本部の新規事業開発プロジェクトリーダーを務める李舜尭部長は、「静音性やコンパクト性、メンテナンスフリーな点が特徴。さらに、価格面での競争力も確保している」と説明する。主要部品の製造と最終組み立ては兵庫県たつの市の本社工場で行い、納期対応力と品質の維持に注力している。
 1960年に自社製キャンドモーターポンプ1号機を完成させて以来、同社はこの分野での実績を積み重ねており、現在ではキャンドモーターポンプの分野で世界シェアトップを誇る。国内外の石油化学プラントや変電所をはじめ、原子力発電所やJR新幹線といったインフラや交通機関にも数多く採用されている。船舶分野では主にケミカル船向けで実績を積んできたが、脱炭素化の進展により、メタノールやアンモニアなど新燃料を使用する船舶向けの需要が増加する見込みだ。特に新燃料の利用においては、安全性確保の観点から「漏れない」ことが重要視されており、同社は完全無漏えい構造のキャンドモーターポンプで、このニーズに対応していく方針だ。
 主に燃料供給システムや新燃料焚きエンジン向けのニーズを見込んでおり、既にメタノール燃料船や、アンモニア燃料船向けの案件を受注済み。国内でメタノールやアンモニアといった二元燃料焚き主機、補機の開発が活発化する中、試験設備向けのポンプの受注も積み上げている。さらに今後は、液化二酸化炭素(LCO2)輸送船向けのニーズも見込む。李部長は、「LCO2の特性により、キャンドモーターポンプが最適解と見込まれており、LCO2船の普及に伴い、当社製ポンプの需要が高まると考えている」と説明する。
 22~24日に今治市で開催される国際海事展「バリシップ2025」では、郵船商事のブースでキャンドモーターポンプのモデルを展示し、PRする予定だ。李部長は、「当社は、ケミカル業界では知られているが、船舶業界ではまだ知名度が高くない。漏れのない構造や耐久性など、当社技術にはメリットがあると考えており、燃料転換が進む中で、船舶用途にも採用を広げていきたい」としている。
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