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2025年2月27日無料公開記事

急拡大の中国需要を取り込み
大同メタル工業、環境対応の材料開発にも注力

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 すべり軸受の総合メーカー、大同メタル工業。近年、中国市場でシェアを急拡大しており、同国産の低速主機向けではシェアをここ5年ほどで5割から9割超にまで伸ばした。環境対応にも注力し、鉛フリー材料の開発や新燃料への対応を進める。同社第2カンパニープレジデント兼低速事業部長の石原幸二氏は、「新燃料転換や既存船の置き換えにより今後も高い需要が続くと見込んでおり、生産設備や技術開発への投資を進めている。受注獲得と高品質な軸受の提供を通じて、顧客に貢献していく」と述べる。

 同社第2カンパニーでは、低速2ストロークエンジンと中高速4ストロークエンジン用のすべり軸受を手掛けている。このうち低速エンジン向けの軸受では、同社調べで世界シェア約73%を握る。商船の主要建造国である日本、中国、韓国のうち、日本と中国では9割を超えるシェアを、韓国では3割程度のシェアを持つ。
 特に著しいのが、中国市場の需要の取り込みだ。同社が中国への拡販活動に注力し始めた2018年ごろ、同社の同国における低速主機向け軸受のシェアは5割程度だったが、中国出身のセールスが定期的に現地を訪問するなど、販売活動を強く推し進めた結果、低速主機向け軸受の中国市場のシェアは21年に8割を突破。現在は9割超にまで達している。また、シェアの伸びに加え、中国の新造船建造量の拡大に伴ってエンジン生産台数も増え、「現在は倍増以上の受注を得ている」(石原氏)。また、昨年11月には中国船舶集団(CSSC)から金メダルサプライヤー賞を、23年12月には中船動力(CPGC)から優秀サプライヤー賞を受賞するなど、品質への信頼を獲得しており、石原氏は「これを弾みに、中国市場での存在感をさらに強め、シェアの維持と共にさらなる受注拡大を図る」と述べる。
 さらに、重要市場と位置付ける韓国でも、現地での関係強化を進める。韓国出身のセールスが定期的に同国を訪問し、直接対話を通じて販売網の拡充を図っている。
 受注拡大に対応し、生産能力も強化する。老朽設備の更新や、FMS(フレキシブル・マニュファクチャリング・システム)の導入により、複数のマシニングセンタを連携させ、24時間稼働を実現。また、さらなる生産効率向上に向けた投資も継続している。「特に中国市場の需要増に対応するため、急ピッチで能力拡大を進めている」(石原氏)。
 重要テーマである、環境対応も進める。環境負荷低減のため鉛の使用規制が厳しくなる中、船舶業界では規制はないものの自主的に使用を制限する動きが出ている。このような状況に対応するため、同社は中高速4ストロークエンジン軸受用に鉛フリー銅合金を開発している。また、軸受最表面に施され、摺動特性を向上させるオーバーレイ(表面処理)においても鉛フリー材の錫系オーバーレイが広く使われており、ガス焚きのデュアルフューエル(DF)エンジンなどでも同様に採用されている。環境対応によりエンジン筒内圧が上昇することに伴い、高い面圧が求められる中、耐疲労性の向上を目的に複層構造の錫系オーバーレイの開発も進めている。さらに、2ストロークエンジン向けアルミ軸受では樹脂オーバーレイが広く採用されているが、その高い摺動特性から中高速4ストロークエンジンにも採用が検討されており、対応を進めている。
 今後の注力テーマには、次世代燃料への対応を挙げる。特に、4ストロークエンジン用の軸受は、アンモニアや水素といった新燃料の利用による腐食リスクなどがあり、エンジンメーカーと密接に連携し、技術開発を進めている。石原氏は、「各種燃料による腐食影響だけではなく異常燃焼による影響の有無を確認し、耐久性の高い軸受を提供していきたい」としている。

石原氏

世界トップシェアを握る、低速エンジン用の軸受

  • 増刊号今治
  • 増刊号日本郵船