2026年1月28日無料公開記事
初の100万TEU突破、航路拡充加速
インターエイシアライン・羅勝興EVPに聞く
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アジア航路を主力とするコンテナ船社、インターエイシアラインは2025年、初めて年間コンテナ輸送量が100万TEUを突破した。アジア域内航路の強化に加え、インドや東アフリカなどへのサービス拡充も進めており、さらなる成長を見込む。羅勝興(Jeff Lo)エグゼクティブバイスプレジデント(EVP)に今年のコンテナ船マーケットとインターエイシアラインの戦略を聞いた。
■大型化と航路拡充で競争力強化
― 2025年のコンテナ海運マーケットとインターエイシアの取り組みの評価は。
「2025年は船腹供給量がコンテナ荷動きの成長率を上回ったが、実際には港湾混雑や悪天候の影響、紅海情勢の悪化に伴う航路迂回などにより、需給のバランスが取れたと言える。当社が主力とするアジア域内航路も堅調に推移した。他方で、米国の関税政策といった問題も発生した。多くのコンテナ船社は今年も利益を計上できると予想するが、2024年後半の好調な利益水準と比較するとある程度の減少を見込んでいる」
「インターエイシアラインとしては、インドや東アフリカへのサービス拡大に続き、アジア域内におけるネットワークの拡充に成功した。これはアジア域内の旺盛な輸送需要に応えるだけではなく、フィーダー機能としてインドや東アフリカへの中長距離輸送にも貢献している。消席率の向上・安定化に加えて、価格戦略の面でもプラスに働いている。2025年はモザンビークへの新規寄港も行い、東アフリカにおけるサービスカバレッジも拡大した。この結果、当社の年間コンテナ輸送量は初めて100万TEUと突破した」
― 2026年のマーケットの見通しは。
「重要なのは2つのポイントだ。1つは紅海・スエズ運河の通航が再開するかどうかだ。主要コンテナ船社が通航を再開すれば、喜望峰経由によって吸収されていた200万TEU規模の船腹量がマーケットに流入することになる。コンテナ船業界にとっては大きな負担となる。2つ目はアジア発欧米向けの輸送需要がどのように推移するかだ。プラスにもマイナスにも振れる可能性があり、欧米向けの需要動向がコンテナ船業界全体に影響を与えると見ている。仮に需要がそれほど強くない場合は、船腹供給過多になり、マーケットへのダメージが大きくなるだろう。一方で、インドや東アフリカなどの新興国市場は堅調に推移すると考えている」
― 今後のインターエイシアラインのサービスの強化方針は。
「アジア域内航路における当社のマーケットシェアはまだまだ伸ばす余地がある。2026年は船舶の大型化を図るとともに、サービスを拡大し、成長の可能性のある市場に参入する。特に中国とアジア諸国を結ぶサービスについては確実に成長していくと考えている」
― 具体的な航路拡充計画は。
「今年は日本と華南、シンガポール、マレーシアを結ぶサービスを拡大するとともに、韓国と中国、インドネシアを結ぶサービスを開始していく。ベトナムやタイ、フィリピンも経済成長している地域だ。これらのマーケットに対して船舶を投入し、スペース供給を増やす計画もある。長距離航路に関しては今年、7000TEU型新造コンテナ船の就航が始まる。インド航路に投入する予定で競争力を高めていく」
「2027年には9200TEU型コンテナ船2隻と7000TEU型コンテナ船2隻を長期用船で確保する予定で、新たに東西航路への投入の機会も模索できる。当面はアジア域内や東アフリカ、インド航路に注力していく。2025年に初めて年間コンテナ輸送量100万TEUを突破したが、今後はさらに伸びていくと確信している」
― 日本市場に対する見方は。
「日本は需要が安定しているマーケットだ。顧客と長期的な関係を築くことが不可欠となる。長期的な協力を踏まえ、一定のマーケットシェアを確保している。2024年には九州と韓国、台湾、華南とベトナムを結ぶ新しいサービスを開始した。2025年は関西と台湾、華南、ベトナムを結ぶ新規航路も始めた。日本発着サービスは今後も継続的に開発していく」
― 近年は主要港湾における混雑やスケジュール順守率の低下が問題となっている。どのように対応していく方針か。
「全体的に運航コンテナ船が大型化しているため、港湾混雑の状況はそれほど改善しないと考えている。また気候変動によって台風も大型化しており、悪天候の影響も深刻化している。一方で、ターミナルの効率性はそれほど向上していない。このため、スケジュール順守率を高めていくための取り組みを検討していく必要がある」
「自社運航サービスについては、社内で協議を重ね、抜港やサービス調整などを柔軟に行っていく。ターミナルオペレーターとも協議を行い、できる限り停泊時間を短縮する方法を検討している。共同運航サービスについても、パートナーと実際のパフォーマンスを定期的に確認・協議し、寄港地の調整について合意形成を図り、改善策を模索している」
― 主要コンテナ船社の中には、ターミナルに投資し、自営ターミナルを持つことで港湾混雑の影響を最小化する動きもある。
「当社の規模では現時点でターミナルに投資するのは難しい。ただ、将来的にはチャンスが訪れる可能性もある。まずはデポへの投資から始め、状況を見ながらターミナルへの投資も検討していきたい。現時点においては優先事項ではない」
■日中を中心に新造船建造
― 新造船の整備方針は。
「7000TEU型に続き、2025年には2900TEU型6隻を発注した。2028年以降に就航する予定だ。チッタゴンマックスの船となり、幅広の船型となる。アジア域内のチッタゴン航路に投入する計画だが、まだ就航まで3年あるので投入先については引き続き検討していく」
― 造船所を選択する上で重要視することは。
「建造コストや建造船の品質、技術、納期、造船所の財務基盤、建造船をどれだけ長く使用できるかなどが重要な要素となる。中国造船所の建造船舶はコストが安いが、日本の船舶は品質が高く、長く使えるので安心だ。韓国の造船所は大型船の建造が多く、われわれが求めるサイズではない。台湾の造船所は船台が埋まっており、現時点では起用が難しい。そのため当面は、日本と中国を中心に選択していくことになる」
― 脱炭素化の方針は。
「新たに中国の造船所で建造する2900TEU型コンテナ船はメタノールレディ船となる。脱炭素化に向けた次世代燃料の使用に関しては、どれが私たちの船隊にとって適しているかを判断するため、引き続き動向を注視するとともに調査していく」
■若い世代で組織を活性化
― 競争力強化に向けてはデジタル化の取り組みも重要となる。デジタル化の取り組みは。
「カスタマーサービスではAIを活用したチャットボット機能の実装を開始した。顧客からのフィードバックによると、スマートな問い合わせ機能は好評だ。基本的な質問であれば、知りたいことを入力することで簡単に知ることができる。また、乗組員の安全も重要なテーマだ。AIを活用して導入を最適化し、対応していく。需要予測などにも役立てていく」
― コンテナ船事業における競争力強化のためには人材も不可欠な要素だ。人材の確保・育成方針は。
「インターエイシアラインは1967年の日南海運を前身とし、2027年には創業60周年を迎える。一方で、当社は成長著しい新興企業のような企業文化も持っている。例えば、企業文化を通じて若い世代を惹き付けており、台北本社の社員の平均年齢は35歳と非常に若くなっている。若い世代には意見を言い合うことを奨励しており、われわれも若い世代が何を望んでいるのか常に意見に耳を傾けている。新しいアイデアを提案してもらい、会社として実現に向けて取り組むなど、非常に活発な組織となっている」
「若いチームであることを考えると、やる気の向上と成長促進に向けて、機会を与えることが重要だ。具体的には、さまざまな部署へのジョブローテーションを奨励するほか、本社から海外オフィス、海外オフィスから本社などへの派遣を通して、グローバル人材を育成するプロジェクトも実施している。日本人やタイ人、マレーシア人、ベトナム人など海外法人の社員を本社に派遣して研修を行ったほか、台北から海外オフィスに派遣することも奨励している。キャリアを積み上げて夢を実現できるような職場にしていくとともに、会社をさらに前進していきたい」
(聞き手:中村晃輔)