2025年9月2日無料公開記事港で輝く女性たち
《連載》港で輝く女性たち⑦
現場を知り、多角的視点で物流を
日新京浜現業部・武田藍奈さん
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外貿コンテナ取扱量で日本一を誇る東京港。同港の大井コンテナターミナルに隣接する日新・大井倉庫で輸入業務を手掛けるのが、同社京浜現業部の武田藍奈さんだ。武田さんは「現場目線を知りたい」という思いで、入社3年目の終わりに営業職から現業部への異動を希望。現在は大井倉庫で協力会社への作業依頼や貨物の管理などを行っている。現場業務は学びが多く、「将来再び営業職に就くことがあれば、現場経験がきっと自分の強みになると思います」と語る。
― 現在の業務は。
「当社の大井倉庫で輸入業務を行っています。大井倉庫では、食品の原料や医薬品の原料、機械や設備などを取り扱っています。私は医薬品の原料や自動車部品、機械などを担当しています。実際にコンテナ貨物の搬入や保管作業を行うのは協力会社です。私は協力会社に作業を依頼し、スケジュールの調整や貨物の管理など事務作業を手掛けています」
― 現場で働くようになったきっかけは。
「当社には若手社員のジョブローテーション制度があり、入社3年目の終わりに現場で働きたいと申し出ました。私は入社後から営業職で働いており、そのときは貨物の搬入情報などを顧客に確認し、それを倉庫に共有して作業を依頼する仕事をしていました。依頼先はちょうど現在の私と同じ、各現場の輸入業務担当です。協力会社の作業員と直接話す機会はありませんでした。営業にいた際には、現場から『依頼された作業に対応できない』と言われることもありました。なぜ対応ができないのか、現場とのギャップを埋めたいと思うようになり、実際に貨物が動いている現場を見て、経験を積みたいと伝えました」
「異動が決まったとき、営業の先輩からは、『これから作業が頼みやすくなる』と言われましたね(笑)。上司からは『現場は男性社会だけど、女性も現場を見てほしい』とも言われました。再び営業職に戻ることがあれば、現場目線も生かした営業は自分の強みになると思います」
― 実際に現場で働いて感じたことは。
「京浜現業部は現在9人体制。昨年度までは女性の先輩が1人いましたが、現在は女性は私1人です。一方、協力会社の作業員は全て男性。ベテランの人たちばかりで年齢差もあり、最初は作業指示を出す際に自分の意見を伝えるのにとても苦労しました」
「今は作業員の人たちとも互いに考えていることを共有しながら、コミュニケーションを深めていくことを大切にしています。自分からコミュニケーションを取ることは大切で、待っているだけでは何もしていないと思われてしまいます。最初は自分の知識・経験不足を感じていましたが、今は作業員の人たちと相談しながら業務を進めています。また休憩時間にも積極的に作業員の人たちと雑談をするなどして、日ごろから相談しやすい関係性を築くことを心がけています」
― 設備面はどうか。
「大井倉庫は数年前にトイレを改修していて、とても使いやすいです。女性用の更衣室もあり、設備面の問題はありません。ただ別の倉庫では、女性用のトイレや更衣室が設置されていないため、女性を配属できないとも聞きました。他の倉庫も環境が整えば女性社員が働く場所が増えると思います」
― この仕事に向いている人は。
「話すのが好きな人が向いていると思います。作業員の人たちは幅広い年齢の人たちがいます。自分自身がそれが得意とは思いませんが、誰とでもコミュニケーションが取れることは大事です。互いに目線が異なるので、作業員の人たちと考えが合わないときもあります。だからこそ、意見をすり合わせて解決していかなければいけない場面は日常的にあります」
― 現場で女性が活躍するために必要なことは。
「まだ一般的には、港湾は男性が働く場所という印象が強いと思います。当社の現業部も圧倒的に男性社員が多く、引き続き女性も活躍できる環境づくりが大事なのではないでしょうか。私自身は、現場は女性社員が少ないからと不安に感じることはありませんが、人によっては女性が働きづらいイメージを持つかもしれません」
「現場の仕事の中でも、事務職などは力仕事がありません。就職説明会などでも、現場業務を一括りにせず、いろいろな仕事があることを伝えていけば理解が深まると思います。『港湾は男性が働く場所』というイメージを崩すことが大事かもしれません。」
― 仕事のやりがいは。
「物流業界は消費者が当たり前に食品や薬を手に取れる環境を作っています。それを自分が支えていることにやりがいを感じ、嬉しく思います」
(聞き手:山﨑もも香、取材協力:日本港運協会)