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2023年3月14日無料公開記事洋上風力発電

●日本海事協会
訓練の認証通じ、量・質とも人材確保

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 日本海事協会(NK)は洋上風力発電分野で必要となる人材の確保につなげるため、風力発電設備の建設や保守・運転を行う作業員、定点保持(DP)などの特殊な技能を必要とする作業船の船員を対象とした訓練の第三者認証を行っている。船員教育訓練の認証で培った知見を洋上風力に生かす。訓練内容の提案も行い、国内の洋上風力の普及を後押しする。
 斎藤直樹海技部長は「量・質の両面から労働力の確保が必要。風車メーカーや発電事業者などが求める安全・技能要求に見合った訓練の提供が日本でも始まりつつある。NKはその間に入り、要求に見合った訓練を認証することで、人材確保に貢献する」と語る。
 NKは2020年に、風力発電設備の建設や保守に関わる作業員の安全や技能に関する訓練標準を制定しているGWOから、日本と台湾を対象に同組織の基準(GWOトレーニングスタンダード)に沿った訓練を認証する機関として認定された。GWOは作業時の安全や技能、緊急時対応などさまざまな訓練の標準を示しており、NKはそのすべての訓練の認証を行える日本で唯一の機関だ。国内では基本安全訓練だけではなく、風力発電設備の構造を学ぶ基本技能訓練(BTT)も認証した実績がある。洋上風力が運用・保守段階になれば、風車の羽の補修や、より高度な応急医療、緊急時の脱出など、訓練メニューは増える見通し。その認証需要にも対応していく。
 作業船の船員に対しては、DP、海底ケーブル敷設、アンカーハンドリングなどの特殊技能の訓練需要も出てくる。今年2月には商船三井グループがDPシミュレーターを用いて行うケーブル敷設とアンカーハンドリングの訓練コースに対して基本承認を行った。洋上風車に作業員を運ぶCTV(クルー・トランスファー・ベッセル)の操船訓練の認証も進めている。
 GWO訓練のように事実上の標準訓練になっているものもあるが、作業船の運航技術のように、発電事業者や風車メーカーなどから具体的な訓練要件を示されないこともある。NKは第三者の立場で訓練内容を認証することで、一定の訓練品質を担保する。
 また、洋上風力が稼働し海域を陸上から管理する拠点が立ち上がると、それを運用する人員も必要になる。そのような陸上人員の訓練の認証も視野に入れる。
 NKは昨年、洋上風力分野の訓練開発・提供に実績のあるマースクトレーニング社と連携することで基本合意した。国際標準を踏まえて作業員に必要な訓練内容を検討し、ガイドラインを示す計画。「日本での洋上風力の安全・技術面の要求は、欧州と同じ道筋をたどるとみており、マースクとの連携などを通じてその道筋をいち早く知ることで、訓練機関がそれに対応できるようにすることがわれわれの役目だ」(斎藤氏、以下同じ)。NK自体は訓練主体にならないが、訓練内容の提案も行っていく。
 洋上風力発電は日本に新しく立ち上がる産業。「この分野に携わる人たちの共通の思いは、若い人にこの産業に入ってきてほしいということ。再生可能エネルギーの分野は若い人への訴求力があり、洋上風力には人材を獲得するよい材料がそろっている。それを生かすには、しっかりとした教育訓練を施す業界であることを印象付けることが大事だ」。NKは教育訓練の認証などを通じて、それに貢献していく。

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