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2023年3月14日無料公開記事洋上風力発電

●商船三井
洋上風力人材育成に厚み

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商船三井本社ビル内にDPシミュレータを設置した訓練センターを開設

 商船三井は洋上風力発電に関わる船員、保守作業員向け訓練の提供、フィリピンからの人材派遣を通じて、この分野の人材需要に応える。杉山正幸電力・風力エネルギー事業群第二ユニット長は「日本が目指す2040年に30〜45GWの洋上風力導入に向けて、建設段階、運用保守(O&M)段階で相当な人材需要が生じるだろう。O&Mに用いられる船の船員訓練はもちろん、風車設備の保守を行う人材の確保に関係者は危機感を持っている」とし、ソリューションを提供する。
 洋上風力関連の作業船は特殊な技術を要するものも多い。その一つが船を洋上の定点に保持するDP(ダイナミック・ポジショニング)技術。その訓練需要に応えるため、商船三井は子会社のMOLマリン&エンジニアリング(MOLMEC)と昨年6月、商船三井本社ビル内にDPシミュレータを導入したトレーニングセンターを開設した。DPオペレーターの資格発行機関として国際的に認知されている英国ノーティカル・インスティチュート(NI)の認証を得た国内初の訓練施設になり、DP操船の基本や応用などを学べる5つのコースの提供から始めた。MOLMECの新田恭哉取締役常務執行役員は「これまでに海運会社や海洋土木会社などを含め40人ほどが受講した」と説明する。
 訓練コースの拡張も進めており、今年6月から電力ケーブル敷設DP訓練とアンカーハンドリング訓練のコースを開設する予定。これらの訓練は経済産業省資源エネルギー庁の補助事業に採択されている。これら2コースに加えて、「風車の建設を担うSEP船、保守作業員の輸送や宿泊などの機能を持つSOV(サービス・オペレーション・ベッセル)の訓練コースの開設も予定しており、計4コースを2023年度に立ち上げる計画だ」(新田氏)。
 洋上風力発電設備の保守作業員向けの訓練も提供する。商船三井が洋上風力発電事業投資でも提携している風車保守大手の北拓と、資源エネルギー庁の補助を得て24年度に立ち上げる。「洋上の風車が陸上のそれと異なるのは、故障してもすぐに現場にいけないこと。船舶管理で培った予防的保守の考え方は洋上風車にも通じ、われわれのノウハウを生かせる部分がある」(杉山氏)と見る。
 北拓の北九州支店内に洋上風車の基礎部分にあたるトランジションピース(TP)実機を国内で初めて設置して行う訓練になり、作業員輸送のCTV(クルー・トランスファー・ベッセル)からTPの移乗、TPやモノパイル内部への降下や点検、ダビッドクレーンの点検・使用など実技の習得を目的としたものになる。洋上風車そのものの保守は日本では当面メーカーが実施することになるため、BOP(バランス・オブ・プラント)の保守訓練に特化するが、将来的に風車自体の保守の需要が出てくれば、陸上風車で実績のある北拓の知見を生かすこともできる。
 フィリピン人の保守作業者を日本に紹介する事業も行う。「作業員の雇用は各サイトの地元が期待しているところで当然にこれが優先されるが、将来的にそれだけでは十分ではないのではないか」(杉山氏)との予測から、2020年にフィリピン・マニラに立ち上げた外国人人材コンサルティング事業会社MMエンパワーのサービスを活用する計画。多くの外国人船員を起用してきた経験を生かして、マニラにGWO認証を得られる訓練施設を設置し、基本的な安全訓練などを受けた人材を日本に派遣して、今回北拓と実施するような実用的な訓練へとつなげていく。
 これらの人材事業を含め、商船三井グループは洋上風力発電のバリューチェーン全般にわたりサービスを提供する。このうち作業船分野では、出資する企業を通じて、秋田県の港湾区域の洋上風力発電事業にSEP船を投入した実績がある。保守作業員の輸送に関わる船としては、台湾で洋上風力大手オーステッドとの長期契約にSOVを投入している。

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