2023年3月14日無料公開記事洋上風力発電
GWO訓練、洋上風力作業員の“免許証”
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風力発電設備の保守などを担当する作業員はGWO(グローバル・ウィンド・オーガナイゼーション)が定める標準に準拠した訓練(GWOトレーニングスタンダード、GWO訓練)を修了することが、洋上風力で先行する欧州で事実上、ほぼ必須となっている。その訓練を修了することは、いわば洋上風力作業員が “免許証”を手にすることを意味する。
GWOは2012年に設立された非営利団体で、風力タービン業界での安全な職場環境の実現を目指し、安全訓練や緊急手順などに関する国際標準を定めている。ベスタスやシーメンス・ガメサ、GE、金風科技など大手風車メーカーをはじめ、RWEやオーステッドなど発電事業者も加盟している。
加盟企業の多くが、自社で採用する作業員の訓練で、GWOが定める基本安全訓練(BST)や基本技能訓練(BTT)などの基準を採用しており、風力作業員に対するGWO訓練の必要性が高まっている。日本の洋上風力業界でも、風車は主にGWOに加盟する主要な風車メーカーから供給される見通しであることなどから、GWO訓練を提供する機関の整備とGWO訓練による作業員の育成が不可欠となることが見込まれる。
GWO訓練の基礎となるのがBSTとBTT。BSTは応急措置、マニュアルハンドリング、火災予知、高所作業、海上生存技術の5つのモジュールから構成され、安全確保や人命救助、緊急避難方法などを習得する。BTTは機械、電気、油圧、据付の4つのモジュールに分かれ、それぞれの安全な作業手順などを学ぶ。このほか、上級となるアドバンスト・レスキュー訓練やアドバンスト・ファースト・エイド訓練、ブレード修繕訓練などの基準を定めている。
一部のGWO訓練の証明書は更新が必要で、BSTとアドバンスト・レスキュー訓練、アドバンスト・ファースト・エイド訓練は2年ごとに更新講習を受講する必要がある。
洋上風力関係者はGWO訓練について、「洋上風力の世界ではGWO訓練は運転免許証のようなものだ。もちろん、あくまで免許証なので、作業にあたってはさらにしっかりとした技能訓練を行う必要があるが、日本の洋上風力でもGWO訓練はデファクトスタンダードとなっていくだろう」と話す。